挫折から見出した情熱: ザッポス社CEOトニー・シェイの「予備脳」、ジェン・リム氏のスピーチより

とても思い出深い出張を終えてロサンゼルスに戻ってからちょうど1週間が経ちました。

今回の出張もいろいろなことがありましたが、やはりハイライトは、11月21日(月)に私の主催で行った『ザッポスCEOトニー・シェイ来日特別チャリティ講演』です。

イベントに参加された方には、私の感動や気づきを共有する意味でも、そして、残念ながらイベントに参加できなかった方には、少しでもその時の内容や感動を受け取ってもらうためにも、今日から数回にかけて、今回来日のゲストであったジェン・リム氏とトニー・シェイ氏の講演内容にフォーカスをおいて、私なりのサマリーをしてみたいと思います。

まずはジェン・リム氏の講演ですが・・・。

トニー・シェイの「予備脳」、ジェン・リム氏
トニー・シェイの友人であり、彼のバックアップ・ブレーン(予備脳)とも呼ばれるジェン・リム氏のことを、今回初めて知られた方も多かったのではないでしょうか?

jenn lim, ジェン・リム

実は、ジェン・リム氏の名前は、トニーの著書『Delivering Happiness(邦題:ザッポス伝説)』の中にも出てきます。ザッポスが危機一髪の財政難に陥ったときに、トニーがキリマンジャロ登山に行くエピソードが出てきますが、その際に旅路を共にしたのがジェン・リム氏です。

実は、ジェン・リム氏はトニーの個人的な友人であるほかに、ザッポス社のコンサルタントを長年にわたって務めてきた人で、カルチャー・ブックの編集を手がけたり、ザッポスのラスベガス移転の際に活躍したり、ザッポスを創設期以来陰ながら支えてきました。

そして、トニーが『Delivering Happiness』を書いた際にも、編集者よりも著者にもっと近い存在・・・まるでトニーと二人三脚のようなかっこうで本を書き上げ、そのマーケティングにも携わって『Delivering Happiness』をアメリカのビジネス書市場でも稀に見るベストセラーに育てあげた実績を持っています。

『Delivering Happiness』の反響から、同名の会社を立ち上げ、現在は同社の最高経営責任者兼チーフ・ハピネス・オフィサーとして、世界中を飛び回り講演活動を展開している彼女。

自らの体験談で聴衆を魅了
さて、私自身、ジェンにはもう何度も会って話をしたことはありましたが、彼女の講演を聴くのは初めての体験でした。

どこかトニー・シェイを思わせる自然体でオーセンティックなスタイルに胸を打たれました。

jenn lim, ジェン・リム

皆さんも同じだと思いますが、最も共感できたのは、彼女がアジア系アメリカ人としての自分の体験を話していた箇所。

日本にも似た話だと思ったのですが、典型的なアジア系アメリカ人の家庭は教育熱心。ジェン・リムの家庭も例外ではなく、「良い成績をとって、良い学校に行き、良い会社に入る」ことが人生のゴールだと聞かされて育ったそうです。

優等生の彼女も親の期待に沿い、名門カリフォルニア大学バークレー校に入学して医学部進学課程に籍を置きますが、その後、自分が本当に学びたいのは『アジア系アメリカ学』であることに気づきます。

それを告白した彼女は、両親からの猛烈な反対を受けます。

「あなたが良い学校に入れるように、お父さんもお母さんも身を粉にして働いたのに。あなたの先祖は、あなたがより豊かな生活ができるようにと中国からはるばる海を渡ってこの国に来たのに、その気持ちをムダにするのか・・・」

その反対を押し切り、ジェン・リムは自分の意思を通し、『アジア系アメリカ学』を学びます。

挫折の中で見えてきたもの
jenn lim, ジェン・リム卒業後、当時(90年代後半)全盛期であったネット・ビジネスのコンサルタントとして職についたジェン・リム、人生は順風満帆だと思っていたのもつかの間、ネットバブルが崩壊し、解雇の憂き目を見ることになりました。

お金、仕事、社会的地位・・・。今まで「重要」と思っていたことすべてが、一夜にして崩れ去ってしまった。敗北感に打ちのめされながら、彼女は自問自答します。

「自分にとって、生きる意義とは何なのだろう?失敗を恐れず、生涯をかけて打ち込める仕事とは?」

自分にとっての情熱を見つける、それが「幸せ」への第一歩
トニーも、リンク・エクスチェンジ売却後、悶々としていた際に、ザッポスに出会って、その経営に「意義」を見出すことができた。挫折と失望を味わってはじめて、「自分にとって一番大切なこと=情熱」は何かと今いちど問いただすことができた、という点で一致しています。

何を情熱と呼ぶかは人によって違います。それぞれ中身は違っても、各人が自分なりの「情熱」を見つけて、それを原動力に生きること、それが幸せの必須要素だ、というのが、Delivering Happinessのメッセージでもあります。

ジェン・リムの個人的な体験を交えた真摯なスピーチに、心動かされた人も多かったのではないでしょうか。