企業文化とは
企業文化は、目に見えそうで見えないもの。つかみどころのないものという印象があります。しかし、それでいて、企業文化は企業が長期的な繁栄を目指すうえで最も重要な経営要素のひとつと言っても過言ではありません。
ダイナ・サーチでは、企業文化を「企業内の大多数によって共有される価値観」と定義しています。その「価値観」が形となってオフィス内の環境や従業員の服装に表れるばかりではなく、判断の基準となって言動に影響を与えます。ですから、企業が進みたい方向性や事業フォーカスのサポートとなる企業文化を育むことが必要なのです。
ダイナ・サーチが提唱する「コア・バリュー経営」では、企業文化の基盤として、まず、「コア・パーパス」と「コア・バリュー」を定義します。「コア・パーパス」は直訳すると「中核となる目的」ですが、企業が何のために存在しているのか/どんな価値を社会に提供しているのか(「企業の社会的存在意義」)を、「コア・バリュー」は文字通り、「中核となる価値観」を指し示すものです。
共通の価値観(コア・バリュー)に基づく判断や言動を習慣づける仕組みを会社ぐるみで遂行していくことによって、理想の企業文化、戦略的な企業文化を構築することができる、というのが「コア・バリュー経営」の考え方です。
企業文化 引用集
企業文化は意図的につくるもの
企業文化は「空気」のように「あって当たり前」の存在でありながら、実は企業の発展をプラスにもマイナスにも左右する極めて重要な要素です。ですから、企業の経営者やリーダーとしては、組織のプラットフォームとして、会社の使命や社会的意義をより良く全うすることを目的とした企業文化を意図的につくりこんでいくことが必要になります。(引用:未来企業は共に夢を見る- コア・バリュー経営- )
企業文化は百社百様
企業文化はそれぞれの会社にとって独自のものです。仮に、サービス業にふさわしい企業文化のタイプがあったとしても、サービス業を営むからといって二つの会社が同じ文化を持っているとは限りません。
また、例えば、同じ価値観を持っているからといって、二つの会社が同じ文化を持つようになるかというと、そうでもありません。なぜかというと、企業文化というのは価値観を形や仕組みにしたものであって、その表現方法は会社により異なるからです。(引用:未来企業は共に夢を見る- コア・バリュー経営- )
企業文化にいつ取り組むべきか?
企業文化に取り組むのに「早すぎる」ということはありません。しかし、起業して間もない頃というのは、人数も少ないので意思の疎通がとりやすく、また、従業員がみな創業者の家族や友人だったり、経営者が自ら採用を行ったりするため、皆が同じ志や価値観を共有して、同じ気持ちで働けることが多いのです。
ところが、人数が多くなってくると、経営者が働く人一人ひとりとつながりをもつことが難しくなり、採用の決定にも関われなくなってくるため、価値観にばらつきが出てきます。会社の「カラー」に合わない人が入ってくることが多くなるのです。
ですから、今までの例だと、従業員数が100人前後になった時に、企業文化への取り組みを正式に始めたという話をよく聞きます。この「100人」というのが、どうやらマジックナンバーになっているようです。私個人の意見では、企業文化の着手に「早すぎる」ということはなく「早ければ早いほうがいい」くらいに思っています。(引用:未来企業は共に夢を見る- コア・バリュー経営- )
企業文化の現状を見極める
会社の使命にふさわしい企業文化を構築するためには、まず、今ある価値観の見極めを行うことが必要です。人間誰しも「長所」と「短所」があるように、どんな会社にも「良い価値観(使命の実現を促進するような価値観)」と「悪い価値観(使命の実現の妨げになるような価値観)」が存在します。社内の行動や言動に影響している主要な価値観をすべてあぶり出して、今ある良いものを強化し、使命の実現に向けて足りないものをみんなにわかるように明示し、補強していくことが必要なのです。(引用:未来企業は共に夢を見る- コア・バリュー経営- )
企業文化のタイプ
「家族文化」は文字通り家族意識、仲間意識が強く、柔軟性や自律性などの価値観を重んじる文化です。「家族文化」のリーダーは、面倒見のよい兄貴/姉御肌タイプの人、仕事以外のことでも親身に相談にのってくれるような人です。ザッポスなどはこの典型といえるでしょう。
また、製造業やハイテク業界に多いのは「イノベーション文化」です。その名のとおり、革新、起業家精神、創造性などの価値観を重んじます。アップルはこの典型といえます。
セールスやマーケティングをコア・コンピタンスとする組織に多いのは、「競争に勝つ」ことや「一番になる」などの価値観を重んじる「市場競争文化」です。また、お役所や医療機関などによく見られるのは「官僚文化」で、何より安定性や効率などの価値観を重んじます。
ホスピタリティや小売業界など、いわゆる「サービス業」に多いのが「サービス文化」です。「奉仕の精神」を重んじ、「優れた顧客サービス」を提唱するだけでなく、社内での助け合いや思いやりを重視します。アメリカのサウスウエスト航空やジョワ・ド・ヴィーヴルなどがこの典型であるといえます。(引用:未来企業は共に夢を見る- コア・バリュー経営- )
組織の原動力は「人」
会社には大きく、二つの原動力があります。ひとつは、事業に直接関連するビジネスモデルやマーケティング、セールスといった外向きの、ビジネス戦略的な側面です。もうひとつは、内側のこと、つまり「組織」です。ビジネス戦略も実践するのは「人」ですから、組織のモデルもさらに重要になってくるわけです。
どんなに素晴らしいビジネスモデルを考案しても、それを実践する「人」や「組織」が整っていなければ、結果を出すことはできません。グローバル化する激しい競争市場の中で、日本企業は、外向きのビジネス戦略にかなり力を入れてきました。しかしその反面、内向きの、どういう組織をつくるのかというところに関わる戦略は、ちょっと遅れていたのではないでしょうか。(引用:アメリカで「小さいのに偉大だ! 」といわれる企業の、シンプルで強い戦略 )
企業文化が経営戦略の中核
「ザッポスの長期的なビジョンは、『至上の顧客サービスとエクスペリエンス(体験)を提供する』ということです。ザッポスでは、「どんな会社(企業文化やコア・バリュー)をつくるのか」を重視することで、このビジョンを達成できると信じています。また、それが、顧客、社員、取引先、そして最終的には、株主に幸せを届けることにつながると信じています」
ザッポス社CEO トニー・シェイ (引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
企業文化が出発点
「まず、サービスを中核とした企業文化を築いて、育むこと。そうすれば、成果は後からついてきます」
ザッポス社CEO トニー・シェイ(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
ザッポスにおける、企業文化育成への着手
05年のはじめ、ちょうどザッポスの社員数が約90人に達した頃、トニー・シェイはそう考え始めたのです。彼がはじめにやったことは、社内のマネジャー全員に、1通のEメールを送ることでした。
「ザッポスのカルチャー(企業文化)を、きちんと成文化する必要がある。ついては、みんなからアイデアを募りたいのだが・・・」
カルチャー(企業文化)の成文化を言い換えれば、それはザッポスという会社の「魂」を知ることであり、同時にザッポニアンの行動規範となる「価値基準」を定めることでした。「コア・バリュー」をめぐる道のりが始まったのです。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
無形のものを、どうやって形にするか
それが正の要素であれ、負の要素であれ、また自然発生的に生まれたものであれ、意図的に育まれたものであれ、どんな会社にもカルチャー(企業文化)は存在します。
人が集まって生活していれば自ずと生まれるのが文化ですが、野放しにしていたのでは、会社のためになる文化が生まれるとは限りません。
だからといって、体裁や聞こえのよい文化をどこからかもってきて、土壌のないところに無理やり植えるわけにもいかない。文化には、そういうパラドックスが存在するのです。
会社のカルチャー(企業文化)を育成するためには、創業期の魂や原点という土台の上に、「こうありたい」という使命感や価値観を積み重ねることが必要です。そうすることで、会社が長期的に成長できるための「エンジン」としてのカルチャー(企業文化)が創り上げられるのです。
つまり、カルチャー(企業文化)育成の第一歩は、「今あるカルチャー(企業文化)の実像を知ること」です。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
「社内顧客」というコンセプト
ザッポスをはじめ、ディズニーやコンテイナー・ストアなど、「超・サービス企業」がそろって大事にしていること、それは「社内顧客」というコンセプトです。
「普通でないサービス」=「超・サービス」を実現している企業は、決して顧客のほうだけを向いたサービスは提唱していません。それらの企業では、むしろ「サービス」が会社のなかをもめぐる血流となっているのです。
ザッポスのミッションでは、こう謳っています。
「WOW(驚嘆)を具現化し、届けること」
ザッポスでは、顧客も、社員も、上司も、同僚も、取引先も、みんながWOW(驚嘆)の対象になります。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
ザッポスの『カルチャー・ブック』
ザッポスは、「共同体(コミュニティ)」です。「家族(ファミリー)」と言い換えてもいいでしょう。ザッポスは毎年、社員からの投稿を募って『カルチャー・ブック』を発刊します。「ザッポスのカルチャー(企業文化)とは?」をテーマに、社員が思い思いの定義をつづる文集なのですが、この文集に頻出する言葉は「家族」「プライド」「楽しさ」「ありがとう」「スマイル」なのです。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
企業文化の「スケーラビリティ」
「スケーラビリティ」とは、ソフトウェア工学の言葉で、コンピューターシステムが質的・量的変化に柔軟に対応できることを指します。例えば、利用者数の急な増加に対応できないシステムのことを「スケーラブルでないシステム」と言ったりします。
トニーがもともとソフトウェアのエンジニアであるからかもしれませんが、彼はこの「スケーラブル」という言葉をよく使います。
最近、ザッポスが、売上、社員数ともに急速な増加を見せていることを背景に、「企業文化のスケーラビリティ」が頻繁に論じられるようになりました。
一般に企業文化が危機に直面するのは、企業の売上や事業内容が急成長している時、買収・合併や吸収が起こった時、株式非公開企業から公開企業へと移行した時、従業員が100人を超過した時などです。ザッポスの場合は、05年に社員が100人前後に達した時、コア・バリューの成文化を行い、それを基盤とした仕組みづくりを行うことで最初の危機を免れました。
近年は、アマゾンによる買収や昨今の急成長を背景に、第2の創業期、そして、ある意味、第2の危機に直面したと言えます。
「企業文化のスケーラビリティ」を保つカギは、個々の社員を参画させることです。会社の構成員である一人ひとりが、企業文化をつくり、守る責務を小分けにして負うからこそ、どんなに急速な変化にも耐えられる拡張性をもった「スケーラブルな文化」ができ上がるのです。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
「カルチャー(企業文化)こそがブランド」というのが、トニーの主張です。
その根底には、ウェブ時代に合致した、ザッポスならではの世界観があります。
ザッポスの世界観を形づくる第一の原則は、「透明性の高い世の中」という観点です。
ウェブが我々の日常生活に浸透していくにつれ、企業が提供する商品やサービスのみならず、企業そのもののあり方が、一般消費者の目にも筒抜けに見えるようになってきているのです。
かつては、商品やサービスについて、消費者に好まれるような価値やイメージをつくりこみ、それを「ブランド」と呼んで掲げてきました。しかし、今日、企業がブランドの力だけで成り立つことはもう不可能です。企業とブランドが一致し、その価値観やライフスタイルゆえに顧客に愛され、顧客のロイヤルティを得るという時代に変わってきているのです。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
企業文化はエンパワーメントを可能にするための基盤
(中略)サービスのマニュアル化は差別化にはつながりません。ザッポスのように、より高度なサービス体験を提供するためには、顧客の「個」に訴えることが必要です。そして、顧客の「個」には社員の「個」で対応してはじめて感情体験が生まれ、顧客にとってのオンリー・ワンになることができるのです。
だからこそ、今日の企業にとって、社員の「エンパワーメント」は絶対です。しかし、「エンパワーメント」を可能にするためには、その前に会社の根幹になる「基盤」を整える必要があります。ザッポスでは、その「基盤」を「企業文化」に置いているというわけです。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
カルチャー・フィット(文化適性)こそ大切
従来式では、応募者の技能や経験だけに基づいて、採用が決められていました。これは、人を「材」と見る人事においては理にかなったことです。「労働力」としての働きしか人に期待しないのであれば、技能と経験さえあれば事足りるからです。
しかし、近年になって、人材採用における「カルチャー・フィット(文化適性)」の重要性が盛んに唱えられるようになってきました。例えばザッポスでは、「カルチャー・フィット」が技能・経験評価の「補足」としてではなく、むしろ採用決定の「土台」として中心に据えられています。ザッポスでは、現在の採用方針が確立される以前から、トニーが音頭をとり、「カルチャー・フィット」の重要性を訴えてきたのです。
(中略)
人「財」の人事では、人は単なる労働力ではなく、その人柄、想像力、表現力、感性など、すべてが組織を豊かにする宝です。そのため、人それぞれの会社に対する潜在的な貢献度を推測する時に、「カルチャー・フィット」のコンセプトが極めて重要になってきます。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
ザッポスに浸透する「祝福の文化」
ザッポスは、とにかくみんなでほめたたえる、祝福する、伝説として語り伝えるということが、企業文化として徹底されている会社です。顧客から賛辞の電話やメールをもらうと、その内容が社内メールで社員全員に送信されます。また、「ゾラ―(Zollar:ドル(Dollar)をもじったもの)」というザッポス社内仕様限定の通貨があり、顧客や同僚を感動させた賞与としてそれが与えられることがあります。これを貯めると、さまざまな「ザッポス・グッズ」と交換できるのです。
ザッポスはTシャツ好きで、一日の売上記録を更新するたびに記念のオリジナルTシャツをつくって社員に配布します。一日の売上が1億円をはじめて超過した年を起点に、以来、2億円、3億円・・・というように、歴代のTシャツが額に入れられてずらりと壁に飾られている廊下があったりします。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
企業文化にコミットする
社員の「個」を活かすリーダーは、企業文化や価値観に対して、厳格なまでのコミットメントを自らに課しています。彼らは、聞こえのよい社訓を掲げて満足したりしません。「個」を活かす企業をつくるには、全社を挙げてのたゆまない努力が要求されるのだということを、よく知っていて肝に銘じているのです。
だからリーダーは、先陣を切って、自社の文化や価値観のエバンジェリスト(伝道者)になります。そして企業文化の育成と強化が、「最優先課題」だと公言するのです。
また、サービス文化の育成や強化のためには、どんなプロセスやツール、仕掛けが必要なのかを考え、その仕組みをつくります。企業文化や価値観に対して、自身と同様な情熱とコミットメントを共有する人材を集めてリーダーチームを構成し、然るべきポジションに配置するのです。
もちろん、変革のためには思い切った決断も厭わず断行します。いかに有能な人材であっても、企業文化を乱す者を社内に置いておくことはしない、そういったきっぱりとした覚悟ももち合わせているのです。(引用:ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略)
*ダイナ・サーチでは、戦略的企業文化を構築する上で不可欠となるコア・バリュー経営を導入したい、学びたい、と考える皆様の支援活動を行う、コア・バリュー経営協会の運営を行っております。
以下に、事業目的やフォーカスをサポートする企業文化を確立し、成果を上げている会社の事例をいくつか挙げてみました。
企業文化 事例
【1:エアビーアンドビー】
サンフランシスコに本社を置き、「空き部屋のマーケットプレイス」をグローバル展開するエアビーアンドビーは、その画期的なビジネス・モデルのみならず、卓越した企業文化でも知られています。
エアビーアンドビーの創設者兼CEOであるブライアン・チェスキーは、シリコンバレーのカリスマ投資家であるピーター・ティールから投資を受ける際に、会社の長期的繁栄を目指すためのアドバイスを求めたところ、「企業文化をぶち壊すな」と言われたというのはあまりにも有名な話です。エアビーアンドビーはブライアン・チェスキーを中心にその後忠実に企業文化の確立と維持に力を入れ、今ではシリコンバレーでも最も優れた企業文化をもつ会社のひとつとして高い評価を得るようになりました。
コア・パーパス/企業使命として「Belong Anywhere/誰もが居場所を感じられる世界をつくる」を掲げ、それを中心に企業文化が形作られているのがエアビーアンドビーの特徴です。例えばコア・バリュー(社員が共有する価値観)のひとつに掲げられている「ホストらしく」ですが、単に「会社」が「顧客」に対して「ホストらしく振舞う」というのではなく、社内の同僚同士の関係を含み、会社を取り巻くコミュニティを構成するすべての人たちに対する「ホスト(おもてなし)精神」が徹底されているのです。
たとえば、世界各地でコンタクトセンターを運営し、空き部屋の提供者(ホスト)や宿泊客(ゲスト)が24時間いつでも相談できるようにしています。トラブルの発生時など、直ちに問題を解決したり、必要とあらば代わりの部屋を斡旋できるようにしているそうです。また、ホストとは「コミュニティ(仲間)」のような関係を築くように努めています。日本であれば生け花の講習会を開いたりして、国の文化について社員とホストが共に学び、タッグを組んで、ゲストに対して最高の「居場所」を提供できるようにしているのです。
【2:ザッポス】
靴のネット通販会社としてはアメリカで最大規模のザッポスは、その「サービス文化」で名を築きました。CEOのトニー・シェイは、会社の創成期から「文化を築けば結果は後からついてくる」をモットーに掲げ、「サービスを通してWOWを届けよ」というコア・バリューを中核に据えてサービス精神を基盤とした会社を育んできました。
その「サービス精神の徹底」は、人の心を揺り動かし、口コミを呼ぶ感動のストーリーを生んできました。病気で母親を亡くしたばかりのお客さんにサプライズの花束を贈る話は中でも特に有名で、「ザッポス流サービス」を象徴するものとして幾度となく語られています。ザッポスのコンタクトセンターのオペレーターには、「顧客を満足させるためならほとんど何をしてもよい」と言われるほどの幅広い裁量が与えられているのです。
また、この「サービス精神」は社外の顧客だけではなく、社内の同僚同士や社外の取引先にも同様に向けられています。
ザッポスには、社員が社内で後から来る人のためにドアを開けて待っているという習慣があります。また、同僚が困っている時には進んで助け合う、そして、常にお互いを「びっくりさせたり」、「楽しませたり」しようと気遣う文化があります。ザッポスの本社には多くの取引先(メーカー)が商談にやってきますが、商談の際に商材の送料をザッポスが負担してくれるというプログラムまであるのです。このプログラムのおかげで、取引先の担当者は本社を手ぶらで訪問することができます。まさに、至れり尽くせりのサービスなのです。このようにして、ザッポスは「企業文化」を基盤に、顧客、社員、取引先から愛される会社を築いているのです。
参考資料:『ザッポスの奇跡 石塚しのぶ著』
【3:アマゾン】
アマゾンの企業文化についてはあまり語られることがありませんが、アマゾンもまた、色濃い文化を持った会社です。アマゾンの企業文化をずばりひとことで表すとしたら、徹底した「顧客第一主義」でしょうか。アマゾンは「すべては顧客のために」というほんとうにフォーカスを絞り込んだ文化を持っています。社内も実に質素です。今どきのネットの会社というと、スタイリッシュなオフィスや高級なオフィス家具、充実したアメニティなどという印象がありますが、アマゾンでは、例えば社員のデスクは古いドアに脚をつけたものです。これは「廃材利用」というよりは、「コストを抑えて顧客に還元する」というアマゾンの徹底した哲学を象徴するものだと思います。
アマゾンの「顧客第一主義」にまつわる話は枚挙にいとまがありませんが、重要なことは、アマゾンの「企業文化」がオフィスの環境や社員の日々の言動に色濃く反映され、アマゾンという企業全体のアイデンティティを形成しているということです。そして、それがアマゾンという会社の「ブランド」や「個性」にもつながっています。事業目的やフォーカスを後押しする要素になっています。企業文化というのは、企業の在りようにそれほどまでに強い影響をもたらすものなのです。
事業目的やフォーカスを後押しする「戦略的な企業文化」を築くための手法が、ダイナ・サーチが提唱する「コア・バリュー経営」です。ダイナ・サーチでは、「コア・バリュー経営」の導入を支援する様々なサービスを提供しています。詳細はこちら。
参考資料:『アメリカで「小さいのに偉大だ!」と言われる企業の、シンプルで強い戦略 石塚しのぶ著』