ウーバー騒動に学ぶコア・パーパスの重要性

注目を浴びる「コア・パーパス」という概念

コア・バリュー経営の土台はコア・パーパスとコア・バリュー。「コア・バリュー」は、「コア・バリュー経営」のように名前にもなっていますからその重要性は明白なのですが、かたや「コア・パーパス」のほうはともすれば見落とされがちになります。 しかし、昨今、「コア・バリュー経営」に限らず、一般的な「経営」におけるディスカッションでも、コア・パーパスの大切さが盛んに論じられるようになってきています。 2月の中旬にフェイスブックの創設者兼CEOであるマーク・ザッカーバーグが「グローバル・コミュニティを築く」と題した宣言書を社員に向けて発表しました。およそ2,000単語近くからなる長いものですが、設立から13年目を迎え、フェイスブックの「社会的存在意義」を今一度見つめなおすものだと高く評価されました。

 

なぜ、「コア・パーパス」が大事なのか?

なぜ「コア・パーパス」―社会的な存在意義―が大切なのでしょう。 「コア・パーパス」の存在と社員の満足度は正比例することがわかっています。ザッポスの例もそうですが、コンタクトセンターのオペレーターが「電話に出る」ことが自分の役割だと考えて日々の仕事に取り組むのと、「顧客に幸せを届ける」ことと考えて取り組むのとではオペレーター自身の体験も顧客の体験もまったく違ってきます。

社会的存在意義、コア・パーパス

アメリカに92年の歴史をもつドアの製造業者があります。長年の歴史の中では、投資会社による買収や会社更生法による保護申請、大規模なレイオフなどを経てきました。2007年に現在のCEOが就任した時、社会的な存在意義と価値観に支えられた経営戦略、つまり「コア・バリュー経営」を会社再建の戦略として中核に据えたそうです。 この会社のコア・パーパスは「壁を超える」こと。もっと正確に言えば、「人々が障壁を超える、その手助けをすること」です。社員が「障壁を超え」られるよう、充実した人材開発プログラム/リーダー養成プログラムを設け、また、本社の所在するフロリダ州タンパでは、地元の高校生や移民がより良い就職好機を得られるよう支援するプログラムを提供しています。 つまり、社員はただ「ドアをつくる/売る」ために会社に来ているわけではないということです。「人々が障壁を超え、より豊かな生活へのアクセスを得る」ことを可能にするために、会社の皆が力を合わせて働いているといえます。

 

コア・バリュー経営の両輪をなす「コア・パーパス」と「コア・バリュー」

ライド・シェア・サービス大手ウーバーの元女性エンジニアが同社のセクハラ/パワハラ体質を暴露し、アメリカのテック業界を揺るがす大問題になっていますが、その中で繰り返し批判されているのが同社の「企業文化」であり「価値観」です。アメリカの「企業スキャンダル」の中で、こんなにも「企業文化」や「価値観」の問題が取りざたされたことは今までに前例がないのではないかと思います。 ウーバーでは、2015年に創設者でありCEOのカラニックが「14のコア・バリュー」をまとめたそうで、その内容は「成果のためなら何/誰を犠牲にしてもよい」という攻撃的なスタイルを反映したものだといわれています。このコア・バリュー自体が、「有毒な(toxic)」と評されるウーバーの企業文化を作り出している、という説もありますが、私個人の意見では、なにより、「コア・パーパス(社会的存在意義)」の不在が、ウーバーという企業組織のメルトダウンにつながっていると思えてならないのです。 テクノロジー・セクターの「スタートアップ・カルチャー」といえば、それ自体が「攻撃的」で「成果主義」であることで知られていますから、ウーバーに見られるような「セクハラ/パワハラ体質」が蔓延するような土壌が既に存在するといえます。会社が悪い方向に進まないよう、ある意味ストップをかけていくためには、どうしても「会社は私腹を肥やすためにあるのではなく、世の中をよくするためにあるのだ」という『他利』の大義名分を掲げ、社員が一丸となってそれを信じて、それに則って日々働いていくことが必要だと思います。

 

日々の仕事に「大義名分」が生きる職場環境

ただ、「コア・パーパス」や「コア・バリュー」を持っているからといって、即、社員満足が向上したり、「いい会社」になるかというと、実際にはそうはいきません。 働く人が日々、自分が直接携わっている仕事が、自分や自分の会社以外の誰に価値をもたらしているのか、実感しながら働けるような環境・仕組みが整備されていることがキーだと思います。

コア・バリュー経営の仕組み

それはもちろん、CEOや社長といった「トップ経営陣」、そしてそれに続く「リーダー」の日々の言動にまず表れてくることだと思います。会社のリーダーが身をもってコア・パーパスやコア・バリューへのコミットメントを示し、それを実践すること、それができて初めて、社員たちの心を共通の目的と価値観のもとにひとつに束ね、「よい会社づくり」に向かっていけるのだと思います。いかに優れた事業モデルや知的財産、そして人材を抱えていても、企業文化の腐敗は会社を転覆させるほど危ういものなのだ、ということはウーバーの事例が如実に物語っています。