「スモール・ジャイアンツ」-大きな意義を追及する小さな会社たち

先週末、サンディエゴにて「スモール・ジャイアンツ・サミット」というカンファレンスに参加してきました。



「スモール・ジャイアンツ」とは、2007年に出版された同名のビジネス書にインスピレーションを得て設立された非営利団体で、必ずしも「大きくなる」ことではなく、事業の成功と社会貢献を両立させる「偉大な会社」になることを目指す小・中規模企業を支援する組織です。

カンファレンス自体は、起業家を読者対象としたビジネス誌としては米国最大のInc. Magazineの協賛を受け、それこそ規模は小さいけれども活気ムンムンのとてもエキサイティングなカンファレンスでした。

何といっても、一番印象に残ったことは、参加者の仲間意識が非常に高いこと。

同じ志をもつ仲間である、ということが理由として大きいのでしょうが、参加者のほとんどが顔見知りで、「社会を変える大きなムーブメントの一端を担っているんだ」というものすごい覇気が感じられました。

大企業とは違って、小・中規模企業はいかに革新的なことをやっていても、メディアなどに取り上げられることはなく、なかなかスポットライトを浴びることもありません。しかし、そういった中で(むしろ、そういった世の中であるからこそ)、「規模は小さいけど、でかいことをやってやろう」という経営者たちの意気込み、そして、「そのノウハウを、志を同じくする人たちに広めていこう」という強烈な助け合いの精神が感じられました。参加していて、周囲の人からとても温かいものを感じる、いろいろな意味で素晴らしいカンファレンスでした。理論ではなく、小・中規模企業特有の経営の問題に日々直面している経営者たちから、実質的に役立つ知恵を貰うばかりではなく、背中をバシッと叩かれるような刺激というか、元気を貰ったカンファレンスでした。

「頭脳」を刺激されるカンファレンスはアメリカにはたくさんありますが、それだけではなく、「ハート」を刺激されたカンファレンスであったと言ってもいいかもしれません。

実質1日半のプログラムだったのですが、イベントを通じてのテーマは、「企業文化の重要性」。「企業文化(言い換えれば、会社の社会的存在意義と価値観)」を明確に定義し、その育成に意図的に取り組んでいくことが、これからの企業の成長要素として必要不可欠であることが、実践的な知識も交えて繰り返し語られていました。

私の長年の研究テーマである「コア・バリュー・リーダーシップ」の考え方とも大いに共通するところがあって、とても勇気づけられました。

企業の強さというものは、人(のやる気やコミットメント)により決まるということは、経営者やリーダーの人たちなら日々実感していることであるはずです。そして、その人たちに力を最大限に発揮してもらうためには、今の世の中、お給料やベネフィット云々ではなく、働く人たちの心を束ね、奮い立たせる「意義」や「価値観」が必要であるということです。

ひとこと補足すると、今の時代、お客様に魅力を感じてもらえる組織というのは、「実質を伴う組織」です。ただ単に「カッコよさ」や「ステータス」だけがものを言った時代は過去のものとなり、「世の中のために良いことをする会社」から買いたいと生活者はみんな思っています。アメリカや日本など先進諸国の生活者は特にそうです。だからこそ、企業は自らの主義主張を明確にし、それを世の中に発信していくことで、生活者の真の共感を得ることが大切なのだと言えるでしょう。

さて、「企業文化」や「意義」や「価値観」などというと聞こえはよいが、それが会社の業績といったいどんな関係があるのだ、という疑問の声が聞こえてきそうです。

私のように、長年アメリカの優良企業を研究し、多くの経営者と会い、その話を聞いてきた人間に言わせれば、「優れた企業文化」や「共通の価値観」のある会社が長期的に成長する会社であることは明白です。それを裏付ける数多くの事例が存在するからです。

しかし、これをより客観的に立証し、それらの成功事例の「エッセンス」を抽出するために、今、スモール・ジャイアンツは三年計画で非常に野心的なプロジェクトに取り組んでいます。シカゴの大学と協力し、アメリカの小・中規模企業2,500社以上を巻き込んで、企業文化と業績の関連性や「HOW(企業文化を基盤として、長期的に成長・繁栄する企業をどうつくるのか)」の立証に乗り出しているのです。

このプロジェクトには前述のInc. Magazineも協賛していて、同誌が毎年発表する「アメリカで最も急速に成長している5,000社」の中から2,500社を選出し、企業文化に関するアンケート調査を行います。そしてさらに、その中から企業文化に特に優れ、しかも急成長している会社を選び、調査員が社内に赴いて従業員をビデオ・インタビューするという「ディープ・ダイブ(深耕調査)」を行うというものです。

私が代表をつとめる会社、ダイナ・サーチでは、今、アメリカ本部と協力して、スモール・ジャイアンツの日本支部を設立し、日本の小・中小規模企業の経営者の皆さんを巻き込んでの活動に本腰を入れて取り組んでいく準備を進めています。

今回のカンファレンスには、ブラジル支部やフランス支部の代表者も参加し、必ずしも規模にはこだわらない、しかし世の中に大きなインパクトを与える偉大な企業「スモール・ジャイアンツ」のムーブメントがグローバルにも広がりつつあることを実感しました。

日本で、このムーブメントに携わっていきたい、「我こそは」と思う経営者やリーダーの皆さんには、是非ご連絡をいただきたいと思います。