情報過多時代の落とし穴

年に三、四回ほど日本に出張するが、出張のたびに、クライアント企業やその他の場所で講演する機会がある。毎回違うテーマで話すので準備はかなり大変だが、アメリカの市場で起こっている新しい動きや、それに関する私自身の洞察をなるべくふんだんに盛り込んで話すように留意している。
一週間ほど前に日本出張から帰ってきたばかりだが、今回はある講演の冒頭でiPhoneの話をした。講演の本題ではなかったのだが、アメリカでは私が日本に出発する直前にiPhoneがリリースされて毎日のようにニュースを賑わせていたからだ。講演の中では、iPhoneが50万台くらい売れたらしいと話したが、7月25日付けの公式発表を見ると、実際に売れていたのは27万台だったらしい。ただしこれも販売開始の2日間で売れた数値だそうだ。
iPhoneリリース時には様々な推測や憶測が混線していて、ソースによって25万、50万、70万などあらゆる数値が囁かれていた。さらにややこしいことに、これらの数値がどうやって算出されたのか、定義が明確でないケースも多かった。インターネットなど情報技術の発達のおかげで、個人が入手できる情報量こそ多くなっているが、それが必ずしも良いことであるとは言い切れない。情報過多時代だからこそ、正しい情報を見極める目、分析するセンスが必要なのだと改めて痛感した。