サイバー化するクリスマス商戦

さて、「サイバー・マンデー(11月26日)」の業績結果については、多くのニュース・メディアが報道しているので詳しくはそちらを見て欲しい。簡単に要約すると、米国リテール市場におけるこの日のオンライン売上(トラベル、オークション、企業購買を除く)は7.33億ドル(733億円)で、日次売上高としては史上最高を記録した。前年同日と比べると21%の増加であるという。
$マウスパッドもっとも、「サイバー・マンデー」は、アメリカのクリスマス商戦期間中オンライン売上が最も多い日では決してない。実際、2006年の記録によると、上位10位にも入っていない。今年の予測を見ても、12月10日、あるいは同月17日が、本年度クリスマス商戦最大の「オンライン・ショッピング・デー」になるだろうとされている。では、なぜ、「サイバー・マンデー」がこれほどまでに騒ぎ立てられるのか、と、首を傾げる人も多いことだろう。
もともと、「サイバー・マンデー」とは、アメリカのリテール業界団体であるNRF(National Retail Federation)が2005年に創案した名称である。感謝祭明けの月曜日に「普段より活発なオンライン・アクティビティ」が見られるのに着目した人が、これをPR戦略に活用できないかと知恵を絞り、「サイバー・マンデー」というキャッチーな言葉を捻出したという。それが今では、個々のリテーラーのプロモーション・カレンダーの中に取り入れられ、一般消費者の間で認知されるまでになっている。
しかし今年は、「サイバー・マンデー」という名称がばかばかしく感じられるほど、オンラインでのクリスマス・ショッピングがNorm(当たり前)になってきたことを実感させられた。今年、多くのショッパーは、「サイバー・マンデー」を待たずに、「ブラック・フライデー」に店舗に足を運ぶ代わりにウェブに集った。例えば「サイバー・マンデー」のwalmart.comのビジター数は700万人(通常の日次平均は200~300万人)、しかし感謝祭当日のビジター数は1,000万人であり、サイバー・マンデーのビジター数をはるかに上回った。
勿論、ホリデー・ショッピング期間中の店舗売上とオンライン金額ベースで比べてみると、店舗売上の方が依然として桁違いに大きい。しかし、ホリデー・ショッピングのオンラインへの移行は、今年に留まることなく、来年、そして再来年と、順調な進展を遂げることだろう。購買の意思決定プロセスに着目してみると、オンライン→店舗や、店舗→オンライン、あるいはオンライン→店舗→オンラインなどといった、複数チャネルに跨ったプロセスも主流化している。クリスマス商戦に限らず一年を通じて、また、販売/トランザクション・チャネルとしてだけではなく、包括的なGo-to-Customer(顧客アプローチ)戦略の一環としてウェブを捉えない企業に生き残りの道はない、という確信をますます強くしたサイバー・マンデーであった。