「ホリデー・カタログ」に思う:米国クリスマス商戦外伝

感謝祭、ブラック・フライデー、そしてサイバー・マンデーを後にし、街はいよいよクリスマス一色になってきている。店舗や街頭を飾るクリスマス・デコレーションはもちろんのこと、個人宅の庭先や屋根、外壁にも、赤や黄色のカラフルなクリスマスの灯りが目立ち始めた。
街に繰り出してこれらの光景を眺めるのも楽しく心踊ることだが、毎年のように同様に楽しみなのはリテーラーやカタログ業者、ラグジュアリー・ブランドなどがクリスマス・ショッパーに向けて発刊するホリデー・カタログだ。ホリデー・カタログはまさに、各企業の創造性と独創性の集大成であり、華やかな季節にふさわしくどれもこれも贅を凝らしたものである。我々の会社ではサービスの一環としてカタログ収集も行っているのだが、スタッフが収集したものを、仕事の間に見せてもらうことがある。そこで気づいたこと。
私は仕事柄、また個人的な興味もあって、長年にわたりアメリカのカタログ業界の変遷を追ってきている。「マルチ・チャネル」の世の中になり、売り手にとって、そして買い手にとってのカタログの位置づけは大きく変わってきたように思う。カタログ通販はもとより、ローカルな店舗で手に入らないものを調達するためのチャネルとして発達したが、今の時代、ネットに行けば誇張でなく何でも買える。
その結果、カタログはもはや単なるチャネルではなく、企業にとって欠かせないマーケティング/ブランディング・ツールとなってきた。カタログは消費者のパーソナルな空間(=ホーム)に入り込み、売り手のブランド・イメージを消費者の頭の中に色濃く刻み付ける機会をもつ。消費者のテイストに訴えるカタログは、本棚に保管され、あるいはリビング・ルームのコーヒーテーブルの上に置かれて来客の目に触れるかもしれない。優れたカタログというものは、単なる「在庫目録」としてではなく、いわば、「憧れのライフスタイルの指南役」として顧客に受け止められているものだ。店舗も同様だ。今時、「行くことに意義がある」と感じさせるエクスペリエンスを提供しない店舗なんて、存在しても仕方がない。
ところで今年、アメリカの高級デパートはこぞって、「グリーン(=環境)」をメインテーマとしたホリデー・メッセージを発信している。ビバリーヒルズのニーマン・マーカスもバーニーズも、廃材や再生材を使ったディスプレイでもって、「グリーン・クリスマス」を謳っている。アル・ゴアの『不都合な真実』以来、環境熱が高まっているアメリカだが、アメリカではまだまだ、「エコ志向」が富裕層/インテリ層を中心としたものなのか、環境保全を呼びかけるメッセージは、これらの消費者層を主なターゲットとしたブランドによって多用されているのが常だ。分別ごみの習慣などが一般に浸透している日本に比べて、随分感覚が違うものだと改めて考えさせられた。