アメリカ人にウォシュレットを売るには・・・

クリスマス商戦真っ只中のある日のこと、両手一杯に袋をぶら下げた買い物客でごった返す高級モールを歩いていたら、便座を置いた展示ブースが突如として視界に入ってきた。
Louis Vuitton、Tiffany、Coachなど、有名ブランド店に紛れて便座が現れたのには驚いたが、その「もの」自体にはなんだか見覚えがある。よくよく見ると、我が日本が誇るTOTOウォシュレットではないか!
toto1.jpgクリスマス時期の客足の多さを見込んで、どうも、TOTOが臨時ブースを出したようだ。モールの真ん中に、便座、という場違いさに、買い物客も思わず足を止めて見ている。

私自身、ここ10年くらいウォシュレットを愛用している、ロイヤル・ユーザーである。アメリカ人の来客がトイレを使うとき、たいていの場合慌てて飛び出してきて、「あれは何だ。どうやって使うんだ?」と質問する。あまりにハイテクで最初は皆戸惑うらしい。しかし一度使った人たちにきいてみると、なかなか評判はいい。売り方と取り付け工事の難題さえ解決できれば、アメリカでも流行るのではないかと常々内心思っていた。
問題のブースは一風変わったつくりで、透明の壁を通して中が見えるようになっている。ひとつぽつんとディスプレイされた便座の隣にはPCが置いてあり、多分、それを操作するといろいろな説明が聞けるようになっているのだろう。しかし残念ながら、誰もブースの中に入る勇気がないのか、皆、遠巻きに見ている。「ねえねえ、あれって何」などと小声で囁きあっているカップルの会話を耳にして、たまりかねて説明を買って出た。使用方法、そのメリットなど、別に頼まれたわけではないが、まるでセールス・レップ顔負けの大活躍をしたわけである。
商品の性質上、モールの真ん中で実演販売、というわけにもいかないが、アメリカ人にウォシュレットの素晴らしさをわかってもらうには、やはり実際に使ってもらうのが一番いいかもしれない。アメリカでは、水廻りメーカーのKohlerがウィスコンシン州で高級リゾート・ホテルを運営していて、バスルームの設備は勿論すべてKohler製で贅の限りをつくしている。また、消費者向けパッケージ商品メーカーのプロクター・アンド・ギャンブルは、ニューヨークのタイムズ・スクエアに、同社の人気ブランド「チャーミン」のトイレットペーパーその他アメニティを取り揃えた臨時公衆トイレを設けている。ロサンゼルスの高級ホテルやレストランに協力をつのり、ウォシュレットを設置してもらったら・・・、と想像をたくましくする私なのであった。