コア・バリュー経営から学ぶ―ミス発生時の対処法

ミス発生時。責任が問われるのは誰?

ビジネスの舞台裏にいるのは生身の人間ですから、どんなに精巧なシステムを入れても、細心の注意を払っても、間違いが起きることはあります。コア・バリュー経営においては、従業員の「ミス」にどのように対処しているのでしょうか。

ザッポスのコンタクトセンターで働く社員社員のアイデアを活発に取りいれ、仮に経験や実績がなくとも、「情熱」をもつ人に実践を任せることを厭わないザッポス。しかし、万が一ミスが起こった時に、責任が問われるのは誰なのでしょうか。

先日あげた6pm.comの例もそうですが(価格設定ソフトの不具合による表示の誤りで、一夜にして160万ドルの損失を出した)、たいていの場合、意思決定は複数の人たちや複数の部門間で下されるので、ひとりの人にすべての責任がのしかかることはほとんどない、と社外教育事業部のジョンさんは教えてくれました。

また、ミスが起こった時、それをきっかけとして会社の中のルールやプロシージャーがより厳格に固められてしまう、というのはよくあることですが、ザッポスではどう対処しているのか、という疑問については、「ミスが起こったからといって、ルールやプロシージャーを厳しくするということは基本的にはない」とい う答えが返ってきました。

ルールを最小化するコア・バリュー経営

ザッポスCLT社員ブックオフオンラインの元社外取締役で、コミュニケーションデザイナーの河野武さんが、『ザッポスの奇跡』のまとめとして下さった言葉で、『カルチャーを創造すれば、ルールをゼロにできる』という言葉があります。私も大好きな言葉で、旧版の帯にも使わせていただいたのですが、ザッポスという会社は、本当に「ルール嫌い」なんですね。でも、頭ごなしに「ルールに反対」しているのではなくて、「ルールを取り除く」ことを可能にする基盤として、堅固な「企業文化」があるというわけです。コア・バリューを共有し、会社の中のすべての意思決定や行動の基盤とすることにより、ルールを最小化し、社員に権限委譲する。コア・バリュー経営の要ともいえるところです。

悪意から引き起こされるのではなく、一時の気の緩みや不注意が原因で起きる「ミステイク」。社内で価値観(コア・バリュー)が一致していれば、「ルールで縛る」のではなく、「マインドセット」を問い、改めるように促すことに道理がある、というのがザッポスの考え方です。

ミスから学ぶのが革新体質企業の条件

「ミスを恐れてルールで縛りつけたり、挑戦することを止めてしまったりしたら、新しいものが生まれる余地はなく、発展性がなくなる。それよりも、ミスが起こった時は、その経験から学ぶという道を選ぶ」。

過去に、CEOのトニー・シェイも、「社員に自由を与えると、ミスが起きやすくなるのが怖くないか」という質問に上のように答えていました。「革新体質」の企業のひとつの条件として、「ミスを恐れず、ミスから学ぶ姿勢をもつ」ということがありますが、経営者としては、「言うは易し、行うは難し」で、とても勇気のいることだと思います。ザッポスの「思い切り」を改めて実感しました。