コア・バリュー経営から学ぶ―社員のアイディアを会社に活かすには・・・?

米コア・バリュー経営のお手本、ザッポスから学んだこと

先日のザッポス訪問から学んだこと。

今日は、社員のアイデアを会社に活かす法の第二項、「意思決定の仕組み」についてお話したいと思います。

会社の隅々から「社員の声」を吸い上げ、驚くほどの敏速さで「実践」に移していくザッポス。

「・・・でも、会社の業績に関わるような大きな意思決定の場合、現場が単独で決めるというわけにはいかないでしょう。いったい、どういう仕組みがとられているのですか」

セミナー参加者の皆さんから、こういった質問がよく聞かれます。

価格表示ミスを巡るザッポスの英断

・・・その通り。会社の中の「決断」には大きなものから小さなものまでたくさんあります。「意思決定にどんなプロセスがとられるか」は厳密にはケース・バイ・ケース。また、それが「顧客に関わる意思決定」であるかそうでないかによっても、プロセスは大きく変わってくると思います。会社の利益を左右するような大きな意思決定と、例えば社内行事に関する意思決定では、まったく異なる仕組みがとられて然るべきでしょう。

2010年5月のある週末。ザッポスが運営するディスカウント・サイト、6pm.comで、価格設定ソフトの不具合のため、サイトで取扱われているほとんどすべてのものが一律の価格で売られるという事件が起こりました。

価格表示のミスは、顧客の視点からいえば「あってはならない」ことではありますが、「ありうること」ではあり、珍しいことではありません。ザッポスとしては、価格設定ソフトの不具合を詫び、正規の価格で顧客に購入を促すこともできたはずです。しかし、ザッポスは、「自らのミスで顧客に迷惑をかけたり、がっかりさせたりするわけにはいかない」と考え、問題が発生した真夜中から午前六時の間に購入された商品をすべて表示されたままの価格で販売するという決定を下しました。これにより、ザッポスが被った損失は160万ドルにも及んだそうです。


社員のアイディア吸い上げ―ザッポスの三つの基本原則

このような大きな意思決定の場合、当然、CEOであるトニー・シェイや当時CFOであったアルフレッド・リンが最終的な決断を下したと思うのですが、今回、社外教育事業部のジョンさんのお話を聞いて、ザッポスにおける意思決定は以下の三つの基本原則に基づいていると感じました。

  • 社員全員が「コア・バリュー」という共通の価値観を共有しているので、誰が意思決定を下してもブレやズレが生じることがない。
  • 新しいアイデアに対するザッポスの基本姿勢は、「間違いを恐れて試さないよりは、リスクを冒してでもやってみたほうがいい。もし間違いが起こったら、その経験から学ぶことができるのでムダにはならない」。
  • アイデアの提案は発案者の職種や役職に関わらず平等に尊重されるが、ただアイデアを出せばよいというものではない。「どうやって実現するか」というところまで考え、提案し、実践するところまでが要求される。

特に三番目の項目には深く頷かされ、感心させられました。どんなに優れたアイデアや面白いアイデアをもっていても、「いざ実践」という段になるとそこまで現実的には考えていなかったり、丸投げにしてしまったりという人が多いものです。経営者として、そして人を管理する立場として、この姿勢を徹底して人のアイデアを聞くこと、そして、アイデアを出す人のほうも「どうやったら実現につながるのか」というところまで考えるという「責任ある姿勢」を徹底することで、より革新体質な会社をつくっていくことができるのではないかと考えさせられました。