コア・バリュー(価値観)を基準にした人事評価 -ザッポス社担当者のインタビュー

ずばり、「コア・バリュー(価値観)を基準にした人事評価」について、担当者に直撃インタビュー!

8月21日(日)から26日(金)にかけて、ザッポスを皮切りに、企業文化探求の旅に行ってきました。

今回のプロジェクト・クライアントは、東京に本拠を置くインターネット・メディア企業様です。

『人の幸せに貢献しつつ、会社を社員の自己実現の舞台とする』ことを企業使命とし、目下急成長中の会社さんです。

今日から6回にわけて、このプログラムを終えて学んだこと、感じたことなどを簡単に綴っていきたいと思いますが、第一回の今日は、ザッポス社への訪問&人事部の方とのディスカッション・セッションから。論議を醸す話題として、「コア・バリュー(価値観)に基づいた人事評価」が関心の的になりました。

ザッポス社内の風景

企業文化への貢献度を昇進・昇給の指標として使うのは難しいのでは・・・?

最大の論点になったのは、「職務上の成果が50%、企業文化への貢献度が50%」といわれるザッポスの人事評価制度。

「企業文化への貢献度を昇進・昇給の指標として使うのは難しいのでは・・・」
「各上司の主観的評価に頼ると、社内でブレやズレが生じると思うのですが・・・」
など、参加者の皆さんからいろいろな疑問や質問が寄せられました。

ザッポス人事のバハブナさんこれに対して、懇切丁寧に答えてくれたのは、ザッポス人事部のバハブナさん。一点一点、根気強く、我々の疑問を解き明かしてくれます。

まず、明らかになったのは

「企業文化への貢献度が、昇進・昇給にダイレクトに反映されるわけではない」ということ。

「そもそも、人事評価というのは全体像の評価ですから、企業文化への貢献度だけを見て、〇〇点中何点だから昇給の対象になる・・・とかいうことはないのです。 ただし、文化への貢献度があまりに低かったり、それが改善されなかったりした場合、解雇の判断材料になることはあります」

なるほど。企業文化への貢献度は昇進や昇給の判断材料ではないということです。ここではあえてこみいった説明は避けますが、ザッポスでは、昇進や昇給は、「ザッポス・ユニバーシティ」という企業内大学が管理運営する認定制度に結びついているのです。つまり、指定されたスキルやナレッジをマスターすれば昇進や昇給の機会が与えられる、ということです。

ならば、そもそも、企業文化への貢献度を評価する意味は・・・?

そこで湧いてきたのは、昇進にも昇給にも結びつかないとしたら、企業文化への貢献度を評価する意義はどこにあるの?・・・という疑問ですが、

それに対しては、バハブナさんは、『学びと成長』という、ザッポスのコア・バリュー第五条を挙げ、こう説明してくれました。
「企業文化への貢献度は、十カ条あるコア・バリュー(価値観)の一つひとつについて測られますが、どれをとっても十点満点になるということはそもそもあり得ないのです。むしろ、継続的に向上する、その努力を怠らないことに意義がある。ですから、会社の制度として各社員の企業文化への貢献度を評価するのは、向上の余地がどこにあるのか、ということを社員本人が認識したり、上司と確認しあうための仕組みなのです」
ザッポスのコア・バリュー(価値観)のひとつでもある『継続的な学びと成長』を実装するための仕組みとして人事評価制度があるということですね。

人事評価はコミュニケーション・ツール

このセッションで最も印象に残ったのは、「人事評価はコミュニケーション・ツール」という言葉。ザッポスでは、年に一度の人事評価を、上司から部下への一方通行の「通達」としてではなく、双方向の会話として捉えているとか。ですから、ザッポス文化への各自の貢献度についても、必要とあらば毎日でも上司から部下へのフィードバックや上司-部下間のディスカッションが行われているそうです。

「人事評価」というと、「人の価値を図る」とか、「仕事における貢献度を評価する」とか、いずれの言い方をしても「最後通達」みたいなイメージがあるのですが、ザッポスにおいては、個々の成長を促していくため、それに同僚や上司、時には部下が加担するための仕組みとして人事評価があるということでした。とても新鮮な見方ですね。

企業文化とは、社員の行動や言動に表れてこそ本物。だからこそ、社員間での切磋琢磨を仕組み化したザッポスの姿勢にあらためて感銘を受けました。