ザッポス、システム開発部の人たちと食事会をしました

先日、サンフランシスコとラスベガスで企業文化に関するセミナーを行った際に、ラスベガス滞在の夜、ザッポスの人たちとの交流会を急遽企画しました。

参加してくれたのはザッポスのシステム開発部から三人。開発部の中でも、それぞれ全く異なる部署で働く三人ですが、いずれも各部署で中核的な役割を担う人たちで、普段ではきけない話を聞くことができました。

テクス・メクス・フュージョンのレストラン

交流会の場所は、創業期からの重鎮としてザッポスを支えてきたエグゼクティブ、フレッド・モズラーが所有するレストラン。タコスやナチョスを主力メニューとしたテクス・メクス・フュージョンのレストランです。その名も「ナチョ・ダディ」。

簡単な自己紹介を終えて、話が向いたのは、現在、トニー・シェイが中心となり手がけているザッポスのラスベガス・ダウンタウン(旧繁華街)再開発プロジェクト。

と、いうのも、交流会に参加してくれたサラさんは、同プロジェクトの一貫として最近ダウンタウンにオープンした「テック・ライブラリー」の司書を務める人だからです。

「テック・ライブラリー」は、ラスベガスに住むテック関連ワーカーや起業家、また、テック業界に興味をもつ人たちのためのネットワーキング・スペースです。「ライブラリー」という名のとおり、テクノロジーやビジネス関連の書籍も揃えていますが、なにより、個人がノートブックPCなどを持ち込み、くつろきながら働くためのゆったりとしたスペースが設けられています。

年間30ドルを払ってパスを購入すれば、いつでも気軽に立寄って利用することができるそうです。テクノロジーに興味がある、将来、テック業界で働きたいという人のために、リーズナブルな料金でプログラミングのクラスなども提供していくとか。

「テック・ライブラリー」をはじめとする数々のダウンタウン再開発プロジェクトは、当初はザッポスを母体とするプロジェクトの一貫として立ち上げられましたが、今ではトニー・シェイが首謀をつとめるダウンタウン・プロジェクト(Downtown Project)という組織のもとに運営されています。ザッポスはアマゾンの傘下にある会社ですから、すべての投資はアマゾンの承認を得ないと遂行することはできません。新しい案件があがるたびに、予算を通すのが困難だったというのがその理由らしいです。

そうこうしているうちに、話はザッポスが昨年サンフランシスコにオープンしたシステム開発オフィス、そして、ザッポスの創業期と現在との違い、などといったことに移っていきました。

創業期からザッポスにいたという古株、グアテマラ生まれの日本人とのハーフだというアキさんは、

「昔は何かを思いつくと、その場でどんどん変えることができるという身軽さとスピード感がありました。でも、今はそういうわけにはいきませんね。サイトが少しでもダウンすると、何千、何万人というお客さんに迷惑がかかるので。だからどうしても慎重になっています」

「サンフランシスコにシステム開発オフィスを開いたのも、ザッポスのメイン・サイトではなかなか実験できないような新しい売り方や買い方を提案するようなソリューションをどんどん開発していくためなのですよ」

と、ラスベガスとサンフランシスコのオフィスを行き来しているパヴェルさんが話してくれました。

ザッポスは最近、iPadやフェイスブックのアプリはもちろんのこと、今までのネット通販にはないような画期的なソーシャル・コマース的ソリューションを次々と世に出していて、その動きはとてもエキサイティングです。

最後に、リンクエクスチェンジ(トニーが最初に起業した会社)時代からトニーを知る人と直接話をする機会はめったにないので、「あなたの目から見て、トニーってどんな人?」とアキさんに聞いてみました。

「とても不思議な人ですね。超人的に頭が切れて、なにより先見の明があります。例えば、人にプロジェクトを任せるとき、彼の頭の中では既にすべてがレイアウトされていて、問題点もちゃんと見えているのですよ。後になって、任された人が問題点を指摘すると、『そうだよね。あなたはどうしたらいいと思う?』と質問するんですが、それは相手の創造力を引き出すためのものなんです。自分から絶対に答えは言わない」

「ザッポスが自らフルフィルメント・センターを立ち上げた当時、それまで数日かかっていた配送を翌々日配送にアップデートする、ということをやったんだけれど、それが軌道に乗った頃にトニーから祝福のメールをもらって、『プロジェクトの成功おめでとう。だけど僕らの目標は、ゆくゆくは翌日配送を実現することだ』と書いてあった。それを読んで私は、内心、「ありえない」と思ったんですけど、数年後にはザッポスは本当にそれを実現してしまいましたね」

日本側の参加者から出た「皆さんの手柄話を聞かせてください」という質問に対して、「そんなの思いつかないなあ」、「いや、君はいろいろ重要なプロジェクトを手がけてきたじゃないか」など、ザッポス側の参加者三人が口々に譲り合うという、ザッポスのコア・バリューである「謙虚であれ」を地でいく一(ひと)コマもありました。

ここでご紹介できたのはごく一部ですが、ザッポス社システム開発部の苦労話やその他もろもろの経験譚について、たっぷり二時間きくことができた長いようで短いような交流会でした。

パヴェルさん、アキさん、サラさん。平日の夜の忙しいところ、ほんとうにどうもありがとう!