会社のコア・バリュー(価値観)に合わない人をどうするか

「時間をかけてゆっくり採用して、会社のコア・バリュー(価値観)に合わない人は即解雇する」。

「会社のコア・バリュー、つまり企業文化を守る」ことに関して、ザッポスがもつ厳しい姿勢を示すトニー・シェイの言葉です。

「でも、コア・バリューに合わないからといって、そんなに簡単に解雇できるわけではないでしょう。コア・バリューに合わないのではないかという兆候に気付いたら、いったいどんな処置をとっているんですか」

日本の企業の皆さんからよく聞かれる質問です。

今回の訪問でも、この質問がひとつの焦点になりました。「制度」はともかく、例えば同僚や上司、部下などの人間関係の中で、「コア・バリューに合わない行動や言動がある」と感じられた場合に、どんな対処がされているのか?

ザッポスのカスタマー・ロイヤルティ・チーム(コンタクト・センター)のスーパーバイザーとリード(チーム・リーダー)の方々にお話をききました。

ザッポスのコンタクトセンター ザッポスでのミーティングセッション

「コア・バリューに反する行動や言動を見かけたら、もちろんそれを本人に直接指摘した上で、話し合います。その人の性質やもともと持っている価値観の問題なのか、それとも何か一時的な状況がそういった行動や言動を引き起こしているのかを突き止めようとします」

人は感情の動物ですから、何か問題や悩みを抱えていると、つい心にもない行動をとってしまうこともあります。性質やもともと持っている価値観が「ザッポスのコア・バリューとあわない」という根本的な問題の場合、改善のしようもないですが、もし一時的な問題が引き金になっているとしたなら、コーチングで軌道修正を行うことができる、とザッポスでは考えます。

解雇に至るかどうかはともかく、軌道修正のプロセスや仕組みが明確に定められていて、それを全員がよく理解しているところがすごいと思いました。

また、コア・バリューにあわない行動や言動の非を咎めるだけではなく、その根底に何があるのかを突き止め、親身になって問題解決に取り組む・・・、それが前提になっているのだと認識させられました。

話をしてくれたスーパーバイザーの言葉が心に残ります。

「ザッポスではみんながファミリー(家族)です。家族ならば決してお互いを見捨てたりしない。出来る限りのことをした上で、最後の一手が『解雇』ということです」

「コア・バリューに合わない人は即解雇」といっても、軽々しく解雇に臨むわけではない。上司が部下を、あるいは同僚同士が人間としてお互いを深く理解し、つながるこ とで、ザッポスの企業文化を毎日の生活の中に息づかせ、より堅固なものにしている・・・。どんな制度や仕組みよりも、そんな「人」のつながりがザッポス・カルチャーの強さの秘密なのだ、と実感させてくれたひとことでした。