心を束ねる―経営におけるコア・パーパスの重要性

パタゴニアの創設者、イヴォン・シュイナードは「アクシデンタル・ビジネスマン」。つまり、偶然ビジネスマンになったのであって、もともとビジネスを志し ていたわけではない、と著書の中でも語っています。愛してやまない自然との戯れ(具体的にはクライミング)・・・、それをより一層楽しむために、ヨーロッパの優れたクライミング・ギアを自分流にアレンジした商品をつくり始めた・・・。それが、パタゴニアの前身である「シュイナード・エクイップメント社」の 起こりです。(写真はパタゴニア本社の敷地内に今も残る鍛冶場小屋。若き日のイヴォン・シュイナードの作業場。)

パタゴニアの発祥の地となった小屋

さて、商品開発においては天才であり、常に並々ならぬこだわりをもって商品と向かい合っていたイヴォン・シュイナードが、会社の「コア・パーパス(社会的存在意義)」として選んだのは、「画期的な商品をつくる」ことではありませんでした。

むしろ、彼は、「環境保全のための実践的な解決策の提供」をコア・パーパスとして選んだのです。

ですから、パタゴニアでは、「環境保全に対する実践的な働きかけ」を行うとともに、「利益性の高い企業である」ことを非常に重視しています。「利益」というビジネスの一般的な指標において、パタゴニアが優れた成果を上げることで「社会貢献と利益」の両立が可能であることを立証すれば、ひとりでも多くの経営者の考え方を変え、社会貢献を存在意義とする会社を世の中にひとつでも多く増やすことができる・・・というのがパタゴニアの考え方なのです。

近年、アメリカの企業経営において、売上や利益の創出を超えた「コア・パーパス(社会的存在意義)」の重要性がますます注目を浴びるようになってきています。「何のために存在する会社なのか」「どんな価値を社会に対して提供するのか」と自らに対して問い、目的を定めて、社会にそのメッセージ発信するとともに、社員を導いていくことの重要性が問われるようになっています。

企業の成功を短期的な視野で見れば、単なる「売上」や「利益」ということになりますが、長期的な「存在意義(コア・パーパス)の達成」としてみれば、成功の指標は大きく変わってくるものと思います。パタゴニアではそれが「環境保全への貢献」、ザッポスでは「世の中に幸せを届けること」だということですね。