コア・パーパスの上に成り立つ経営―パタゴニア訪問記

日本で「社会起業家」や「ソーシャル・ビジネス」などという言葉が囁かれ始めたのはつい近年のことですが、この元祖のような会社があります。「何のために存在している会社なのか・・・」。コア・バリュー経営ではこれをコア・パーパス(社会的存在意義)と呼んでいますが、それを確固として定めて、半世紀以上もの間、一貫した姿勢で経営を行ってきた会社です。

わざと名前を隠してもったいぶるわけではないのですが、この会社は、なんと事業としては50年代の後半から存在した会社です。今日、皆さんに知られている社名がついたのは72年のことなのですが、いずれにせよ、「ソーシャル・ビジネス」というものが「トレンディ」になる前から、「わが社のコア・パーパスは社会への貢献であり、利益は共同体に還元される」というビジョンを貫く形で運営されてきた会社なのです。

その名も「パタゴニア」。「・・・なんだ、『パタゴニア』なら知ってるよ」という人も多いでしょう。日本にも18店舗の直営店がありますから、アウトドア志向の人の中には特に、その商品を愛用しているという人も多いと思います。

しかし、コア・パーパスに基づくその経営の一貫性と、「自然への愛と情熱」をコア・バリューとして結ばれた堅固な企業文化は案外知られていないのではないかと思います。2005年に、創設者のイヴォン・シュイナード氏は『let my people go surfing』という本を著し、これは『社員をサーフィンに行かせよう(2007年、東洋経済新報社)』という題名で邦訳もされていますが、コア・バリュー経営や企業文化について学びたい方は必読の隠れた名作です。

社員をサーフィンに行かせよう

企業文化探求の旅。その最終日には、パタゴニアの本社があるベンチュラという町に行ってきました。ロサンゼルスから海岸沿いの道を北に上ること1時間半、 本の題名にあるとおり、波の良い日にはサーフィンもできるビーチ・コミュニティに、潮と木の香りのするそのオフィスはありました。