アマゾンとザッポスに見るネットで靴を売る仕組み

年の暮れも押し迫った12月のある日、アマゾン・ジャパンをチェックしていたら、「靴とバッグの専門サイト、javari.jp(ジャバリ)オープン」のボタンが目に入ってきた。

アマゾンは米国では、2007年からendless.com(エンドレス)という靴とバッグの専門サイトを運営している。そして日本では今回、ジャバリという別名で同様な趣向のサイトをオープンしたらしい。

靴を買うには試着が欠かせないが、それをどうやってネットで売るのか・・・。この難題を克服し、靴のネット販売という分野を切り拓いたのは、実は米国では「ザッポス」という会社である。送料は行きも帰り(返品)も無料、365日返品OK、ほとんどすべてのオーダーについて翌日お届け・・・というサービス・ポリシーを設けることによって、消費者に安心を提供した。これらのサービス・ポリシーはエンドレスをはじめ競合他社に模倣され、今日、米国では靴のネット販売のスタンダードとなっている。

顧客目線に立ったサービスの提供は熱烈な支持を集め、靴のネット販売では堂々トップを走る。また、ザッポスは、次世代ネット通販ビジネスのあるべき姿として、今、米国で最も注目されている会社なのだ。

その特徴は、唯一無二の顧客体験への徹底的なこだわりにある。例えば、ザッポスでは、サイトの全ページにフリーダイヤル番号を掲載し、24時間体制でコンタクト・センターを運営している。アマゾンを筆頭として、カスタマー・サービスの電話番号をひた隠しにするネット・ビジネスが大多数である中でだ。また、オペレーターの管理体制も、従来型のコンタクトセンターの常識を大きく逸脱している。問い合わせ対応時間に制限はなく、スクリプトもない。各オペレータが、自分の個性と感性を発揮し、生身の人間としてお客様と向かい合うことこそが、「感動体験」の源と考えているからだ。

ネット販売が始まった90年代には、ネットというテクノロジーが、販売のプロセスにおける人の介入を不必要にするものだと信じられていた。だからこそ、店舗販売にはない「コスト効率」が実現できると考えられていたのだ。

今年、創業十年目にして、ザッポスは年商10億ドルを突破したが、いわゆるネット専業の「ドット・コム」でありながら、最新のテクノロジーと、人のパワーをドッキングさせたところに、ザッポスのすごさがある。日々の受注の75%がリピート顧客による、という前代未聞の数値が、その威力を物語っている。

90年代以降の企業経営においては、「ハイテック」偏重の風潮があった。しかし、今後は、たとえネット・ビジネスであろうとも、「ハイタッチ」への気配りが差別化には欠かせない要素になるはずだと確信している。