MemoryTrends Expoに見た、「思い出産業」の息吹

先日、ラスベガスで開催された見本市に日帰りで行ってきた。この見本市、その名も、MemoryTrends Conference & Expoという、スクラップブッキング・サプライの見本市だ。「スクラップブッキング」とは、日本の皆さんには馴染みの薄い言葉かもしれないが、様々な材料やツールを使って写真をレイアウトし、思い出を語るクラフトのことを指す。ニッチ市場ではあるが、アメリカでは現在急成長している市場であり、今日の市場規模は約25億ドル、2001年以来年間30%近い勢いで拡大しているという。
メモリー・トレンド・エキスポ出展ブースが100程度というやや小ぶりの見本市だったが、各ブースのオリジナリティとクリエイティビティには感服した。一般の見本市とは異なり、ディスプレイされているもろもろのものが手作りであることも非常に魅力的だ。また、スクラップブッキングという市場が、「写真に工夫を凝らして思い出を語るクラフト」という、わりあいに広範な定義に基づいているせいか、実にいろいろな種類の商品が含まれている点も興味深い。ステッカーやスタンプ、リボンなどといった「サプライ系」のものから、コンピューターから出力されるイメージを自由自在にカッティングするハイテク機器まで幅広く取り扱われていて、今後の成長が期待される新興市場ならではの勢いを肌で実感することができた。
米国スクラップブッキング市場を支えているのは、顧客側も供給側も主に女性だと聞いているが、私自身、バケーションの思い出を語るオリジナル・アルバムを創ったり、家族や知人の誕生日や記念日には写真集やDVDを編集してプレゼントしたりなどといったことはかなり頻繁にやっている。社会の高齢化が進む中、若い世代に家族の歴史を語り継ぐための媒体として、あるいは、高齢者が、過去の記憶を新鮮に留めておくためのツールとして、スクラップブッキングが今までにも増してもてはやされてきているのは確かだ。まさに、時代の波に後押しされてぐんぐん伸びている市場であるといえる。米国ビジネスの観察者としても、また、ひとりのユーザーとしても、今後の発展から目が離せない市場である。