「米国ビジネス史上最速の急成長企業、グルーポン」の嘘

『米国ビジネス史上最速(?)の急成長企業・・・』というタイトルで、グルーポンについてのブログを書いたのはちょうど1年ほど前のこと。

創業から3年以内に年商10億ドルを突破する・・・と予測されたグルーポンの嘘が、今日午後の発表で暴かれた。今年中の株式上場をにらみ、上場申請を行ったのが6月初旬。以来、独自の会計指標などが問題視された結果、今回で二度目の訂正報告となる。

今回、問題になったのはグルーポンの「売上」の定義。今までは、クーポンの販売から得た金額の全額を「売上」として発表していたが、新しい発表では、そこから広告主(クーポンを発行する店舗やサービス業者)に支払うお金を差し引いたものをグルーポンの「収入=売上」として計上することにしたという。その結果、2010年の売上は、以前に発表されていた数値(7.13億ドル)の半分未満にあたる3.12億ドルとなった。

この訂正報告とともに、COO(最高執行責任者)マーゴ・ジョージアディス氏の辞任も併せて発表された。ジョージアディス氏がグーグルから引き抜かれてグルーポンのCOOに就任したのはわずか5カ月前のこと。今年に入って、グルーポンは上層部の多くを外部から雇いいれてきたが、まったく企業文化を無視した人選で、社内には不満が鬱屈しているという噂である。

現社員や元社員が匿名でコメントを投稿したり、企業の格付けをしたりできるアメリカの企業情報サイト、グラスドア・ドット・コムを覗いてみると、社内の状況が生々しくうかがわれる。

「アンドリュー(CEOのアンドリュー・メイソンのこと)。うちの営業部隊がどんなに惨めかは見ればわかる。勇気を出して、かつての良きCEOに戻ってくれ」
「(経営陣は)非情な人間ばかりで、ひとつのことしか考えていない。自分のエゴ、そして、どれだけ金儲けできるか、それだけだ」
「(経営陣が)気にしているのは利益だけ。(グルーポンのコールセンターは)普通のコールセンターに成り下がってしまった」

一年前には、ソーシャル時代に羽ばたく企業のひとつの象徴として称賛を浴びていたグルーポン。しかし、ソーシャル・メディアを使ってものを売るから「ソーシャル」な会社とはいえない。「ソーシャル」とは、「社会の」、そして、「生活者の」という意味。「生活者」である「顧客」や「社員」への価値提供を第一に考えなければ、「ソーシャル」な会社ではないのである。

グルーポンは一例にすぎないが、企業が真に「ソーシャル」であるか否かが、生活者の声を通して裁かれる時代になった。生活者一人ひとりが自らの判断を下すことができる、良い時代になったといえる。