ザッポス取材秘話 その① ザッポスの度胸

(2009. 12. 7)

私はこれまで、アメリカやヨーロッパのいろいろな企業に取材し、記事やレポートを書いてきた。取材の終わりに、決まって確認するのは、「何か書いて欲しくないことはあるか」ということだ。取材を許可してくれた企業に対して先方の意向を尊重するのは、当然の心配りであると思っているからだ。

だから、ザッポスで四日間の取材を終えたとき、CEOのトニー・シェイに同じ質問を投げかけた。「何か書いて欲しくないことはありますか」と。

すると、トニーはちょっと肩をすくめて、こう言ったのだ。

「特に何もない。あなたが好きなように書けばいいよ」と。

私は驚嘆して、しばらく二の句が告げなかった。取材時、ザッポスは我々に、「完全に自由なアクセス」をくれた。「これこれこういう人とは話をしてはいけない」なんて、ひとことも言われなかった。インタビューについても、誰でも我々が望む人とセッティングしてくれた。

それだけでも驚きだったし、感謝感激だったのに。「好きなように書け」とは。その時、ザッポスはまさにWeb 2.0型企業だと、あらためて感嘆したのだった。

Ub|XZ~i[トニーも何かにつけて語っているように、Web時代には、誰の口に蓋をすることもできない。顧客も、社員も、「個」が自己表現の力をもち、瞬く間につながって、何千人、何万人にもその声を伝播することのできる時代だ。「ザッポスには、隠すことは何もない。すべてを見てくれ」というトニーの度胸が、彼の態度からは伺えた。

また、それは、「肝心なのは実践である」という、ザッポスの自信を誇示するものでもある。取材時に、堅固な企業文化育成の秘訣を、ザッポスは余すところなく見せてくれた。ザッポスにとって、「企業文化は競争優位の源」であるが、その種をどれだけ明かそうとも、それが容易に模倣可能なものではないことを、彼らは知っているのだ。

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