コア・バリュー経営導入成功のこつは「社員が主役」

一般社団法人コア・バリュー経営協会の発足を記念し、2014年11月14日(金)、東京にて、協会主催初のコア・バリュー経営セミナー&ワークショップを開催しました。来場下さった皆さん、そして、協会の目的に賛同しご登壇いただいたVoyage Group取締役CCOの青柳さん、グッドライフOS代表取締役の大知さん、本当にありがとうございました。

今回のイベントで強く印象に残ったことのひとつは、参加された企業の皆さんの意識の高さです。ワークショップの際に、挙手によるクイック・サーベイを行いましたが、なんと来場された企業さんの半数以上が「コア・パーパスとコア・バリューの両方を文書化している」。正直言ってこれは予想外でしたが、日米ともに、「目的意識と価値観の統一を通した企業組織づくり」に対する関心が高まっていることを実感しました。

ちなみにコア・バリュー経営についてあまりご存知でない読者のために付記すると、「コア・パーパス」は「会社の社会的存在意義」を、「コア・バリュー」は「社内で共有されるべき価値観」を明確に定義したもの。「コア・バリュー経営」とはこれら二つを軸に、より結束の固い組織をつくり、会社としての行動や意思決定に一貫性を持たせつつも、個人の自由な発想を促進していくことを目的とした経営手法です。

もはや、規模・業界・業種を問わない「コア・バリュー経営」

アメリカでは、特に、ネットの若い企業による企業文化への取り組みが盛んに報道されています。これらの企業が「企業文化」や「コア・バリュー」の話題性沸騰に一役買っているのです。しかし、言うまでもないことですが、企業文化の育成に力を入れているのはなにもネットの企業ばかりではありません。

私の会社、ダイナ・サーチが所属している「スモール・ジャイアンツ」という異業種連携の中小規模企業団体がアメリカにありますが、この団体に属する企業の多くは従来型の業界に属する企業たちです。製造業、レストラン業、ケータリング業、コンサルティング業、清掃サービスなど様々です。そして、これらの企業の取り組みは、各々の会社で独自に編み出され、考え抜かれた、地味かつ地道ではあるけれど実に筋の通った仕組みに基づくものなのです。

今回のセミナーでは、前述のVoyage Group(Voyage Groupについてもっと知りたい方はこちら)、グッドライフOS(グッドライフOSについてもっと知りたい方はこちら)という、日本でコア・バリュー経営に取り組み成果を上げておられる二社のスピーカーをお招きし、両社が、自社のコア・バリューを社員の活動の中にいかに反映させ、活き活きした企業文化の育成につなげているかについてお話を聞くことができました。

どんなに立派なコア・パーパスやコア・バリューを掲げても、それが社内の考え方、ひいては活動に浸透し、社員や顧客に価値を生むものでなくては意味がありません。タイプの異なる二つの会社さんの実践例は、参加者の皆さんが、「では、自社ではどのように企業文化/コア・バリューを息づかせていけばよいのか」を考えるうえで、大いに役立つものであったと思います。

シラケないコア・バリュー経営導入のこつは「社員が心から楽しめることをやる」

私自身が聴講者の一人として、お二人のお話からくみ取った共通のテーマは、「社員が主役」というものでした。

「企業文化の育成」も、それにつながる「コア・バリュー経営」も、スタート地点では、当然、企業の経営戦略としてトップ主導で取り組むわけですが、それを「社員が従うべき制度」として取り扱っていては、いつまでたっても火がつかず立ち消えになってしまいます。青柳さんの言葉を借りると、「シラケて」しまうわけです。


株式会社VOYAGE GROUP 取締役 CCO 青柳智士氏

「企業文化の育成」や「コア・バリュー経営」を、「イニシアチブ」としてロールアウトする時、一般的な社員さんの態度というのは、「シラケた」ものであることが普通です。上の人たち、例えば社長さんだけが張り切っていて、「社員が動いてくれないんです」という悩みをよく聞きます。

そんな時、社員の理解や賛同が得られないことに腹を立てたり、肩すかしを食らって意気消沈してしまうことがよくあります。発起人までが「シラケて」しまうわけですね。

まさしく、青柳さんが言うところの、「シラケない、シラケさせない」にカギがあるような気がしますが、では、「シラケさせない」ためにはどうしたらいいのでしょうか。

そこで重要なのが、社員が心から「楽しい」と思うようなことをやる、できる環境をつくる、ということではないかと思うのです。

「祭り」で社員の心に火をつける

もちろん、社員が自発的に行動するようになる・・・、「火がつく」までには、ある意味お膳立ても必要でしょう。辛抱強く球を投げ続けることが必要だと思います。

これを、青柳さんは「祭り」という言葉で表現していましたが、Voyage Groupで年に一度行っている社内運動会、グッドライフOSの年二回の総会がこれにあたるでしょう。アメリカのザッポスを引き合いに出すと、年に四回の全社員会議(「オール・ハンズ・ミーティング」)、取引先を招待して盛大に行うパーティ(「ベンダー・パーティ」)などが頭に浮かびます。

Voyage GroupもグッドライフOSもザッポスも、上にあげたものの他にも多種多様なイベント(「祭り」)を行っていますが、社員が心から「楽しい」と思って参加できる機会を頻繁に設け、また、社員が自発的に面白いことをできる環境・ムードをつくっていくと、その積み重ねで、結果として「社員が企業文化に情熱をもって取り組む会社」、「社員が主役」の会社ができるのです。

ところでグッドライフOSは、会社のコア・バリューの中でも「社員こそがブランド」を特に重視し、全員参加型のユニークな企業文化を育んでおられます。次回は、この「社員こそがブランド」をテーマに、コア・バリュー経営セミナー&ワークショップを終えての気づき第二弾を綴ってみたいと思います。