ザッポス・セミナーからのひとコマ

【よくある質問5】


ごく一般的な考え方は、会社の事業が軌道に乗って、余裕が出てきてから企業文化に投資するという考え方です。しかし、ザッポスのトニー・シェイの考え方は企業文化がすべての基となるというものです。「健全な企業文化を築けば、成果は後からついてくる」のです。ですから、ザッポスではまだ会社が100人程度の規模だったころから、企業文化の育成に並々ならぬ力を注いできました。アマゾンが未来の成長のために顧客エクスペリエンスのインフラに先行投資してきたように、ザッポスも企業文化に先行投資してきました。ザッポスにとって、企業文化は、会社の評判やブランドや、売上や利益など、会社を存続させるのに必要なすべてのことを築くためのインフラなのです。

【よくある質問4】


アマゾンとザッポスは、サービスに対するアプローチがまるで昼と夜の如く異なる会社です。アマゾンは、「仕組みのつくりこみによる効率化」、そしてザッポスは、「人の介入によるWOW!(感動)のサービスの提供」というアプローチをとっています。しかしそれでいて、この二社は驚くほど共通した狙いをもっているのです。アマゾンは、「世界で最も顧客志向な会社」、そしてザッポスは、「世界一のサービス・カンパニー」になることを使命に掲げています。もともとアマゾンは、創業当初から徹底的に「人」を中心に考え抜かれたシステムを構築し、「顧客に良かれ」を優先した先行投資を行ってきた会社です。顧客自身の購買履歴だけでなく、同じような商品を購入した人がどんな商品を購入しているか、というデータ解析をベースに「おすすめ」をはじき出すリコメンデーションのシステムなど、他社に先んじて、「人」中心のコマース・プラットフォームをつくりこんでいったのがアマゾンです。また、何か不都合が起こった時に問題の根源をとことんまで追求し、二度と間違いが起こらないようにする、「ゼロ・ディフェクト(欠陥ゼロ)」の考え方を基盤にサービス改善を行っていることでも有名です。アプローチが異なるだけで、目指すものは同じであるということです。そして、どちらのアプローチが優れていて、どちらが劣っているということではありません。ただ、ひとつ言えることは、どのアプローチをとるにしても、「徹底的に追及する」「とことんまでやる」ことが必要だということです。アマゾンとザッポスがそれぞれ優位性を保ち、市場をリードし続けているのは、各々のアプローチに対する熱狂的な姿勢を貫いているからだといえるでしょう。

【よくある質問3】


一般に顧客対応は、「処理業務」として捉えられているものです。「処理業務」において重要なのは二点。スピードと均質性です。しかし、顧客対応を通してザッポスが目指しているのは「処理業務」ではなく、「PEC」です。「PEC」とは、「パーソナル・エモーショナル・コネクション」。つまり、「個人的かつ感情的なつながり」を意味します。ザッポスが目指すのは、「顧客対応の一件、一件を通して、オペレーターと顧客が個人的かつ感情的なつながりで結ばれること」なのです。「お客さんが貴重な時間を割いて、わざわざ向こうから電話をかけてきてくれる。そして、全神経を集中して、我々の話を聴いてくれる。一生涯続くつながりをつくるのに、これ以上のチャンスはありません」とCEOトニー・シェイは言います。ザッポスにとって、顧客からの問い合わせの電話(あるいはメール、チャット)は一期一会。TV広告より何より効果的なブランディング好機なのです。だから、ザッポスのオペレーターさんたちは、一人ひとりの顧客に素顔で向き合い、忘れ難い体験を提供することに全力を注ぐのです。

【よくある質問2】


送料および返品無料。必要とあらば何時間でも顧客と話をし続けてもよいカスタマー・サービス(最高記録は10時間だそうです)。24時間営業のコンタクト・センターおよびフルフィルメント・センター・・・。確かに、こういった万全な顧客サービス体制は「安い」ものでは決してありません。
多くの会社にあるように、顧客サービスをコスト・センターとして捉えると、「なんとかして切り詰めねば」という発想になるでしょう。しかし、ザッポスでは顧客サービスをコスト・センターとして捉えていません。ザッポスにとっては、「サービス体験」が売り物なのです。顧客はザッポスで靴や服を買うかもしれませんが、ザッポスに来る理由はそこにあるのではありません。むしろ、顧客は「ザッポスならではの体験」を求めてザッポスでお買い物をします。ザッポスの本業は「WOWのサービス体験の提供」なのです。だから、それに対してケチケチするわけにはいきません。それは、例えばアップルのような会社が商品開発のお金の節約を語るようなもので、まったく命取りであるといえるでしょう。

【よくある質問1】


確かに、ザッポスはウェブサイトで靴やアパレルを売っています。しかし、それが彼らの売り物なのではありません。ザッポスはあくまで、たまたま靴(やその他のもの)を売っているにすぎない「サービス・カンパニー」なのです。また最近では、「Delivering Happiness(幸せを届ける)」という言葉をもってしてそのビジネスを定義しています。
会社の成長初期に、事業の再定義を行ったこと、それが、ザッポスの今の成功の出発点になったと私は思います。それも、会社の中核をなしている人たちが集まり、「何のために生きるのか」、「どんな会社をつくりたいのか」ということを見つめなおしてそれを定義したのです。これをやればお金がいくら儲かるだとか、業界トップになれるだとかいう計算やロジックに基づいたものではありません。
ビジネスを突き動かすのは「人」です。人の情熱がビジネスにとって最大の原動力です。人(特に社員)の心に火をつけるためには、その人が生きる上での「志」に向かって話しかける必要があるでしょう。「靴を売る」という目的には人の心を奮い立たせる力はありません。人の時間や頭脳を買うのではなく、人の心を掴むことが、今日の企業にとって最大の強みになりますが、「事業内容」を超えた崇高な目的を定め、そのもとに皆の心を束ねることにより、ザッポスはこれを達成したのです。

【ザッポス哲学その9】


良くも悪くも、どの会社にも文化があります。意識的な努力をしなくても、人が集まればそこに文化が形成されますが、問題は、野放しの状態で発生する文化には力がないということです。企業の使命の実現を助ける文化は戦略的かつ意図的に育成されなくてはなりませんが、その積み木となるのがコア・バリュー(中核的価値観)です。社内で共有したいと思う価値観を定め、それを日々の行動や言動に浸透させていきます。共通の価値観をもつ人たちがそれに基づいて意思決定を下し、行動すれば、それが企業文化となって目に見える形で表れていきます。だから、「すべての基はコア・バリューである」と言うことができるのです。会社の文化を建て直したかったら、まず会社に蔓延している価値観の見直しを行うことが必要です。

【ザッポス哲学その8】


「ネットによる靴の販売」という事業定義からは、飛躍につながるインスピレーションもクリエイティビティも生まれてきません。ザッポスは、会社の創業期においてまず「我々はサービスを売る会社である」と事業の定義を塗り替え、さらに後に、これを「Delivering Happiness(幸せを届ける)」に発展させました。そして、この定義に基づき、事業運営や組織運営などのあらゆる側面に創意工夫を凝らしています。現在、本社移転に伴ってザッポスが取り組んでいる「ラスベガス・ダウンタウン再開発プロジェクト」も、このような事業定義なしにはありえなかったことでしょう。

【ザッポス哲学その7】


今日の世の中で最も価値ある通貨は「感情」であると私は思います。例えば「ロイヤルティ(loyalty)」は「忠誠心/愛情」であり、あくまで感情をベースとするものです。仮に、割引クーポンのおかげで購入額や頻度が増えても、真のロイヤルティが得られるわけではありません。ザッポスでは一律セールをすることもなく、割引クーポンも発行しませんが、ザッポスを熱烈に愛するお客様を抱えています。コンタクト・センターをはじめとして、ザッポスの社員たちは皆、顧客一人ひとりと感情的なつながりを築くことに切磋琢磨しているからです。

【ザッポス哲学その6】


利益や効率と顧客/社員満足は対極にあるものとして捉えられがちですが、顧客満足なくしては、長期的に事業を維持することはできません。ですから、ザッポスでは、まず顧客満足を得るために、損得勘定ぬきで最高のサービスを提供します。何より先に「千客万来」を実現しようという思想です。ザッポスの親会社であるアマゾンも、長期的な顧客満足獲得を視野に、赤字経営を覚悟でサービスのインフラ構築に莫大な先行投資をしています。そして、ザッポスの場合は、顧客満足の源は社員満足と考え、社員をハッピーにする環境づくりにも惜しみない投資をしているのです。

【ザッポス哲学その5】


企業文化が重要だ、というのは何も新しいコンセプトではありません。しかしかつてとの大きな違いは、今日では「企業文化は戦略的に取り組まれるべきものだ」という認識が芽生えてきているということです。かつては、企業文化はいわば「おまけ」のような存在として捉えられていました。ザッポスでは、このような従来的な考え方から大きく飛躍し、企業文化を経営戦略の基盤として位置づけ、取り組んでいます。サービス・デリバリー・デザイン、人材戦略、ブランド戦略などすべてが「企業文化」を出発点としているのです。

【ザッポス哲学その4】


ザッポスCEOトニー・シェイは「ワーク・ライフ・バランス」ではなく、「ワーク・ライフ・インテグレーション(融合)」という言葉を好みます。「学びと成長」はザッポスのコア・バリューのひとつですが、ザッポスでは、「仕事面だけでなく、人として成長し続ける」ことを社員に課します。ザッポスに専任のライフ・コーチがいるのはこれを支援するためなのです。会社が「ひとりの人間」としての自分に関心をもち、自分の成長に投資してくれる。これを実感することが、社員のモチベーションにどんな影響をもたらしているかは想像に難くないでしょう。

【ザッポス哲学その3】


ザッポスのコンタクトセンターでは「PEC」を合言葉にしています。P(パーソナル=個人的)かつE(エモーショナル=感情的)なC(コネクション=つながり)です。「PECを築くこと」が、電話やチャットに臨むオペレーターさんたちの目標です。靴を売ることではありません。
お客さんが進んで電話をかけてきてくれる。その「一期一会」を活かして、「忘れ難い体験」を提供し、生涯のお客さんになっていただく。それがザッポスが目指していることなのです。この長期的視野は、ザッポスを筆頭とする未来企業に共通した特徴であるといえます。

【ザッポス哲学その2】


ザッポスは物販業ではなく、「サービス」が売り物です。だから、コンタクト・センターではお客さんと何時間電話で話していても咎められません。また、お客さんが特定の商品を探していて、それが在庫にない場合は、他のサイトやお店で売っているところを探して教えてくれます。なぜ、そこまでするのか。「靴を一足売ってなんぼ」ではなく、「生涯顧客をつくる=ライフタイム・バリュー」のことを考えているからです。今どき、どんな商売でもこういう姿勢が要求されますね。

【ザッポス哲学その1】


「幸せを届ける」。それがザッポスのコア・パーパス(社会的存在意義)です。「社会的な存在意義」などというものは、きれいごとにしかすぎないという人がいるかもしれません。しかし、「世界一の会社になる」、「業界ナンバーワンになる」などといった目標は顧客の共感を得るものでもなければ、働く人の心を奮い立たせるものでもありません。「幸せを届ける」ということを究極の目標にしているからこそ、ザッポスでは、コンタクト・センターに働く人すべてが「私たちは、世の中を良くする、意義ある仕事をしている」と誇りに燃えて仕事をしているのです。これが、ザッポス流サービスの源泉であるともいえるのです。

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