ザッポスCEOトニー・シェイとフェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグの共通点

(2011. 1. 17)

ザッポスCEOトニー・シェイのお父さん、リチャード・シェイに、こんな質問をしました。
「トニーがザッポスに全財産をつぎ込んだ時、親として心配ではなかったか?」
すると、リチャードはこう言いました。
「勿論、心配でしたよ。でもこれはトニーの人生、トニーの会社です。だからできるだけ口出しはしませんでした」

リチャード氏と対談するダイナサーチ石塚

トニー・シェイの著書『Delivering Happiness(邦訳『ザッポス伝説』)』を読んだ人はご存知でしょうが、ザッポスがどん底の財政難にあった時、トニーが当時自分が所有していたロフト・アパートを売る話が出てきます。キリマンジャロ登山の旅に出かける前に、トニーは、ロフト・アパートの売却についてのすべての権限をリチャードに委ねます。

トニーから父親リチャードへの伝言は、
「買い手がついたら、どんな値段でもいいから売るように」
というものでした。

これについて、リチャードは次のように回想します。

「これにはさすがに、私も心配になりました。『そんなことをして、本当にいいのか?』とトニーに問いただしたのです」

すると、トニーはこのように返答したというのです。

「お父さん、僕はまだ若い。僕の友達はみなまだ社会に出たばかりで、貯蓄を持っている人なんてほとんどいないんだ。僕はたまたま大金を手に入れただけで、それがどうしても必要だというわけじゃない。これからオポチュ二ティはいくらでもある」

この話を聞いていて、当時のトニーにみなぎっていたであろう「若さならではの無限の可能性とがむしゃらなエネルギー」をまざまざと感じることができたのです。そして、そこで思い出したのは、フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグのエピソードでした。

2005年秋のこと。世界最大のミュージック・ケーブルTVチャネル、MTVの社長であったマイケル・ウルフは、フェイスブック買収を目論み、マーク・ザッカーバーグにあの手この手でモーションをかけます。

西海岸から東海岸へ、クリスマス休暇に里帰りするザッカーバーグを、バイアコム(MTVの親会社)のプライベート・ジェットに乗せて歓待したり、食事に連れて行ったり・・・。数度の機会を経てザッカーバーグと親しくなったウルフは、ある日、当時、ザッカーバーグが住んでいたアパートに立寄ります。

Ub|XZ~i[そのアパートはいかにもごく普通の若い男性の住まいといった感じで、乱雑極まりない部屋でした。寝るところといえば、床にただマットレスがむき出しで置いてあるだけで、本が積み上げられ、あるものといえば竹製のマットとランプくらいで、飾り気のない質素なものでした。

その夜、食事に行った最寄のレストランで、ウルフはザッカーバーグに持ちかけます。

「君の会社を僕らに売ったらどうだ。そうすれば、君はお金持ちになれる」

ウルフの誘惑に対するザッカーバーグの返答はこうでした。

「今さっき、僕の部屋を見たでしょう。見ての通り、僕はお金はいらないんです。それより、これ(フェイスブック)に勝るアイデアは、この先二度と思いつかないと思うから・・・」

この一言のもとに、ウルフの誘惑はあっさり却下されたわけですね。それでも、後日、バイアコムは総額15億ドルにものぼる買収提案をフェイスブックに対して提出するのですが・・・。

ザッポスCEOトニー・シェイ フェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグ

ザッポスCEOのトニー・シェイとフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ

ザッポスのトニー・シェイとフェイスブックのマーク・ザッカーバーグに共通しているのは、ふたりともお金をはるかに凌ぐビジョンと情熱をもっていた(る)こと。それは、異なる形であれ、「世の中を変える」ということだと思います。そのように壮大なビジョンの前では、お金は意味を失う、ということでしょうか。

考えてみれば、ザッポスとフェイスブックに限らず、偉大な起業家というのは個人のお金儲けに対する欲望ではなく、世の中の多くの人に影響を与える壮大な夢、ビジョンの上に成り立っているものなのですね。そして、先に「若さ」という言葉を出したのですが、それは若者の特権ではない。私自身もいつも大きな夢を見つつ、それを一緒に働いている会社のメンバーと共有することにこの上ない喜びを抱きつつ仕事をしています。年齢や職種や役職に関係なく、すべての人が「夢やビジョン」を原動力として働ける世の中になれば、もっともっと幸せと希望に満ちた社会になるのではないかな・・・と思ったのでした。

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