ザッポスの全社員ミーティングと「新しい節目」

(2010. 11. 4)

もう随分前のことになりますが、10月20日はザッポスの2010年第4四半期オール・ハンズ・ミーティング(全社員ミーティング)でした。

その名の通り、社員全員を招いて行われるミーティングですが、当然ながらラスベガス(本社)とケンタッキー(物流センター)とで分けて行われます。かつては、年に一度だったのですが、今年に入ってからは四半期に一度行われています。

「年中無休」を謳うザッポスのCLT(コンタクトセンター)ですが、このミーティングの間だけは休みになります。それくらい、ザッポスでは重要と捉えられているミーティングです。

私が『ザッポスの奇跡』を書いた時は1,300人程度だったザッポスの社員数も、今では2,000人近くになりました。うち1,000人が本社勤務、残り1,000人がケンタッキーの物流センター勤務です。1,000人の社員が一堂に会するとなると、かなり大きな会場でなくてはなりません。今回は、ラスベガスの大通り(“ストリップ”)にあるMGMグランドのカー・シアター(シルク・デ・ソレイユの「KA(カー)」の専属シアターです)で行われました。

毎回、財務発表をはじめ、ザッポス社内の部門が取り組んでいるスペシャル・プロジェクトについての報告、著者、その他各界著名人を招いての講演、そして、ザッポスならではの社員参加型ゲームやアクティビティが行われます。

今回は、ザッポスが運営しているディスカウント・アウトレット・サイト、6pm.comが、去る10月10日に始めて日間売上100万ドルを突破したこと、そして、最近リリースされたばかりのiPad用ショッピング・アプリの発表などがありました。

しかし、今回のミーティングのハイライトは、なんと言ってもCFOアルフレッド・リンの退任でしょう。

アルフレッド・リンの退任は、今年の3月から既に明らかにされていたことでもあり、会場にはしんみりとした雰囲気はありませんでした。

トニー、フレッド、そして、アルフレッドの後任であるクリス・ニールセンをはじめ、社員からのお別れのメッセージを集めた映像が流され、そして、最後はザッポスの伝統にのっとり、グレイ・グース・ウォッカのショットで乾杯が行われました。(ザッポスには、お祝いごとや特別なイベントがあるたびに、グレイ・グースのショットで乾杯するという慣わしがあります。)

ところで、私にとって最も印象深かったのは、新任CFOクリス・ニールセンを交えての、「Ask Anything Live(何でも聞いてみよう)」でした。

『ザッポスの奇跡』の中でも触れていますが、ザッポスには、「Ask Anything(何でも聞いてみよう)」というニュースレターがあります。社員から寄せられた質問に経営陣が答えるというものです。全社ミーティングでは、それと同じ趣向で、経営陣がライブで質問に答えるというセッションがあるのです。

その中で、クリス・ニールセンに次のような質問が投げかけられました。

「アマゾンの文化の中で、ザッポスにも学んでもらいたいと思うことがあるか」

これに対するクリス・ニールセンの回答は、「常に今日が始まりである」という精神。

Ub|XZ~i[日本の感覚に言い換えると、「初心を忘れずに」ということでしょうか。クリス・ニールセンは、「両社の価値観は似通っているし、ザッポスにも、『謙虚であれ』といった価値観があるが・・・」と前置きをした上で、「自分たちはとても長い旅路の途中にいるのだということ。これまでやり遂げてきたことに関して達成感や誇りをもつのはいいことなのだが、未来に向けて、常に緊張感を忘れないことが大切だと思う」と語っていました。

アマゾン買収以降、ザッポスの企業文化や体制に変化はないのですが、私も、本社を訪れるたびに、いろいろな意味で、「ちょっと余裕が出てきたのかな・・・」と思っていた矢先でした。クリス・ニールセンの言葉は、やんわりとではありますが、「安泰ムード」になってしまったザッポニアンへの戒めのニュアンスも含んでいるのかな・・・と思わずにはおれませんでした。

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