10月8日に終了した第二回ザッポス・エクスペリエンス・セミナー。今回も、ザッポスCLT(コンタクトセンター)のスーパーバイザーから話を聴く機会がありました。
ザッポスのCLT社員(一般社員からマネジャー、スーパーバイザーまで)と話していていつも感じるのは、彼らがザッポスならではの温かみと元気と楽しさに溢れていること。CLTは、まさに、「顧客に幸せを届ける」ことを企業使命とするザッポスの心臓部なのです。
今回のセッションを通して、私が一番重要なメッセージとして受け取ったこと。それを一言で言い表すと「ザッポスのヒューマニズム(人間主義)」ということになるでしょう。
お客さんとの対話を通して、ザッポスが目指しているのは、「PEC(Personal and Emotional Connection:パーソナルかつエモーショナルなつながり)を築くこと」、そして「WOW(驚嘆)を届けること」。どちらをとっても、マニュアルを与えたり、手順を教えたりするだけで成し遂げられるものではありません。
今回も、こんな質問をしてみました。
「PECの創造について、どのような指導をしているのですか」
すると、返ってきた答えは、「まず、マインドセットを変えることです」というものでした。
普通のコンタクトセンターでは、「会社の人間」として、「ものを売る」ということを目的としています。
でも、ザッポスのコンタクトセンターでは、「あくまでひとりの人間として、人(顧客)と向き合い、友人を思いやるようにその人の手助けをすること」を目的とするというのです。「会社の人間」→「ひとりの人間」
「ものを売る」→「友人の手助けをする」
という意識転換をすることによって、
「会社の利害」から、「人間としての価値観」へ判断基準がシフトし、
「会社に良かれ」ではなく、「顧客(友人)に良かれ」を優先することができる、
ということだと思います。
簡単すぎることのようですが、今日、多くの企業が忘れてしまっていることだと思います。
ところで、もう、アメリカはもちろん、世界的にも有名になりつつあるザッポス。
ルームサービスが終わってしまった後の深夜のホテルから「ピザが食べたい!」とザッポスのコンタクトセンターに電話したら、宅配してくれる最寄のピザ屋さんを調べて教えてくれた、というエピソードは、『ザッポスの奇跡』の読者ならご存知でしょう。
セミナーの参加者から、興味深い質問が出ました。
「こんなに有名になってしまったら、面白がってひやかしの電話をかけてくる人もいるでしょう?それらすべてに、今まで通りに対応していくつもりですか?」
それに対しては、「もちろん!」というやる気満々の答えでした。
「ワン・コール・アット・ア・タイム。一件、一件の電話が大事なのです。ひやかしで始まった電話でも、その会話がどこへ行くかは、わからないからです。」
セッションに参加してくれたスーパーバイザーの談です。雑談で始まった電話が、靴の購入に終わることもあるかもしれない。たとえ購入に終わらなくても、「いい気持ちにさせてくれた」という感動が、次の購入につながるかもしれないし、口コミで他の人に伝わるかもしれない・・・。
アメリカのあるブロガーが、ザッポスのコンタクトセンターにチャットで問い合わせて、その一部始終をブログに載せた、そのエントリーは、もう既に一万を超える人が閲覧しているといいます。また、今年春に放映されたザッポスのTVコマーシャルも、制作を手がけた広告代理店が顧客になりすまし、ザッポスのコンタクトセンターに抜き打ちで電話をして、その音声を生で使用したもの。「WOW(驚嘆)!」を届けるチャンスはどこに転がっているか、わからないのです。「僕たちは、『誰が電話をしているのか』で優先順位をつけたり、ましてや、一つひとつのコールに値札をつけたりするようなことはしません」。
ザッポスのCLTが目標にしているのは、「電話の向こうの顧客を友人のように思いやること」。サービスの現場を決して「損得勘定」に走らせない環境の徹底ぶりはザッポスならではだと改めて感心しました。
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