コア・バリュー経営における「人間性」とは?

コア・バリュー経営のフレームワークにおける「人間性」とは、「人間らしさの追求」「個々の尊重」「人間に内在する能力の最大活用」の三つを指します。

「人間らしさの追求」の根底にあるのは、「人は機械ではない」という原則です。当たりまえのように思うかもしれませんが、過去には、ビジネスの世界でこの原則が通用しない時代もありました。第一次・第二次産業革命の時代を舞台とする映画やドラマを見ていると、労働者がろくに休憩も取らせてもらえず、家畜のように酷使されるシーンが出てくることがあります。人の幸福より生産性が優先される時代があったのです。

しかし人間には肉体も感情もあります。身体や心に不調をきたす時もあります。働き手をただの「労働力」として、また買い手を「収入源」として見るのではなく、人として尊重しようというのが第一の要点です。これは、第二の要点である「個々の尊重」につながってきます。

「個々の尊重」の根底にあるのは、「人は一人ひとり異なる」という原則です。これは、人を「顧客」や「従業員」という集団として捉えるのではなく、「個人」として捉え、尊重しようという姿勢です。「個」としての顧客に向き合おうとすれば、マニュアル通りの対応は通用しなくなります。そこで、ザッポスのコンタクトセンターではオペレーターさんの「個性」の発揮を奨励し、個々の顧客に対する「感動体験」の提供を実現しています。これは、さらに、第三の要点である「人間に内在する能力の最大活用」につながります。

「個性」「感性」「創造性」「機転」などはすべて、「人間に内在する能力」です。人間を人間たらしめる能力であり、「人間」と「動物」を、そして「人間」と「機械」を分け隔てる要素でもあります。これまで、ビジネスの世界では、ごく一部の役職や特殊な職種の人たちを除き、これらの能力が封じ込められ、無駄にされてきました。今後は、職場の大多数を占める人たちの「個性」「感性」「創造性」「機転」などといった能力を最大活用できる会社だけが、独自性を確立し、競争優位を築いていくことができます。

「人間性」尊重の組織をつくることで企業力を倍増することがコア・バリュー経営の狙いのひとつです。


コア・バリュー経営における「人間性」についてより詳細に知りたい方は、石塚しのぶ著『コア・バリュー・リーダーシップ~組織を変えるリーダーは自己変革から始める』をお読みください。