歩道を占拠する「スクーター・シェア」ビジネス

弊社のオフィスがあるウエスト・ロサンゼルス地区は、サンタモニカ・ビーチにも近い開放感に溢れたコミュニティです。

夏が近づくにつれ週末を太陽の下で過ごす人の姿も増え、ビーチはたいへん賑わいます。一般的に海岸沿いには人がぶらぶらと歩くための散歩道と、それと並んで自転車やスクーター、ローラーブレード専用の道が走り、その上をビュンビュンとかなりのスピードで人が行き交っています。筆者ももっと若い頃は、海風を浴びつつサイクリングを楽しんだものです。

さて、海岸沿いの道ではお馴染みだった電動スクーターが、ほんの数か月前からなぜか街中の歩道にも姿を現すようになりました。それも、「スクーターに乗っている人の姿」というよりは、「無造作に歩道に乗り捨てられているスクーターの姿」が目につくようになりました。数台が並んで、「駐車」されている光景もあれば、一台ぽつんと横倒しになっているようなことも・・・。それもはじめは大学の周辺などに集中しているだけでしたが、あれよあれよという間に「犬も歩けば棒に当たる」ならぬ、「人も歩けばスクーターに躓く」に。ウエスト・ロサンゼルス地区の歩道という歩道が電動スクーターに乗っ取られてしまうのではないかと危ぶまれるような事態になっています。

これは「スクーター・シェア」という目下人気沸騰中の新業態。歩道に駐車してあるスクーターをスマホのアプリで「アンロック」し、乗りたいだけ乗って好きなところに乗り捨てて「ロック」できる、1ドルから利用できてスマホで簡単決済、という手軽さがウケています。この辺りで幅をきかせているのは「バード(BIRD)」という地元スタートアップ会社で、評価額はなんと2,000億円相当だとか。

ウーバーやエアビーアンドビーなどの「シェア経済」にうまく乗っかった今ふうのビジネスだなあと興味をそそられる反面、生活者レベルではちょっと困惑する側面もあります。スクーターが何台も歩道に放置されているのは見苦しいし邪魔ですし、また、夜間に突如車道に出没されると衝突してしまいそうで身の縮むような思いがします。

・・・という苦情もきっと多いのでしょう。町によっては、「スクーター・シェア禁止令」があるところも、「一社500台まで」というような運営制限を設けているところもあるようです。

二酸化炭素の排出量削減や交通の民主化などといった大義名分も掲げていますが、このような歪と少しずつ折り合いをつけながら、真に世の役に立つビジネスへと成長していくのだろうなと思いなりゆきを見守っています。