米MBAの「最も働きたい職場」はアマゾン

アマゾンのリクルーティングは「顧客第一主義」

これまで、アメリカでMBAに人気の職場といえば、金融かコンサルティングの会社でした。それが、昨今ではなんとあの「アマゾン」が、「就職したい会社」のトップだそうです。2016年には1,000人のMBAを採用したそうで、ここでも、アマゾンは「市場の常識」を覆しているという話。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載されていた記事を読んで、私の思うところを以下に綴ってみました。

なかでも私が個人的に興味を惹かれたのは、アマゾンの「リクルーティング方法」が他の会社とは違ってユニークだという点でした。有名大学のキャンパスをリクルーターが訪れ学生に直接働きかけるのはよくあることですが、普通は、各企業から1、2人のリクルーターが訪れて、大勢の学生を前に「リクルーティング・イベント」を開催するだけだということです。一方、アマゾンは、可能な場合はそのビジネス・スクールの卒業生で現役のアマゾン社員を大勢送り込んで、学生が一対一で相談できる機会を設けるのだそうです。現役社員にマンツーマンで話を聞いてもらえるのだから学生にとっては嬉しい限りでしょうね。学生を「顧客」として考えれば、これも、いわばアマゾンの「顧客第一主義」の企業文化の表れなのかなあと思いました。

アマゾン

本社を訪れるツアーは「キャンセル待ち」

先日、私はたまたま出張でミシガン州アナーバー市にあるミシガン大学のロス・ビジネス・スクールを訪問していたのですが、ちょうど新学期で学生がキャンパスに戻ってきたばかりのとても活気ある時期でした。MBAの学生はインターンとしても「引く手あまた」なので、リクルーティング合戦で大変だそうですが、新学期の第一週目は大学側も各社のリクルーターにキャンパス内での活動を自粛するよう呼び掛けているということです。しかしそれでも、キャンパスの近隣のコーヒーショップで学生と面接したり・・・などなかなかアグレッシブだと聞いています。私もキャンパス近辺のホテルに滞在し、近所のコーヒーショップでお茶を飲んだりしましたが、あの中にひょっとしてアマゾンのリクルーターもいたのかもと思いました。

ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネス

このようにMBAの学生に大人気のアマゾン。ペンシルバニア大学のテッパー・ビジネス・スクールでは、毎年、学生を連れてあらゆる有名企業のキャンパスを訪れるフィールド・トリップを企画しているそうです。数年前にはじめてシアトルのアマゾン本社を訪問した時は参加者はわずか15名だったそうですが、今年は定員の50名をゆうに超える応募で、キャンセル待ちが出るほどの人気だったとか。

「アマゾン的人材」を引き寄せる堅固な企業文化

近年、「要求の激しい高ストレスな職場」としてたびたび悪評を得ているアマゾンですが、アマゾンでインターンとして働いた経験をもつ学生の話によれば、「アマゾンの企業文化は社員フレンドリー。金融やコンサルティングの会社に比べて、ワーク・ライフ・バランスもとれているように思う」ということです。私の知人にもアマゾンの米国本社で長年働いている人がいて、私もアマゾンの本社を訪問したことがありますが、市場や業界の垣根を越えてアグレッシブに事業展開し、ビジネスのルールを日々塗り替えているような会社ですからそれなりの厳しさもストレスもあるのでしょうが、「特別な」会社に働いているという誇りや、崇高な目的を掲げ、スピード感あふれる環境の中で働いているエキサイトメントをひしひしと感じました。確かに、「万人に好まれる」職場ではないけれども、業界随一の精鋭たちと肩を並べて働きたい、とそういったチャレンジを渇望しているような人にとってはまたとない「最高の職場」なのだと思います。自分たちの会社に合った人材を強烈に引き付け、合わない人を自ずから排除・淘汰するのが「堅固な企業文化」の成せる業であるとも思います。

記事の中には、世界最大のナチュラル/オーガニック・スーパーであるホール・フーズ・マーケット買収のニュースがブレークした時、たまたまインターンとして働いていた学生さんのコメントが載っていましたが、「まるで世界の中心にいるようで非常にエキサイティングだった。早く卒業してアマゾンで働きたい」と語っていて、まさに、アマゾン「が」求める人材とアマゾン「を」求める人材、の本質を目の当たりにしたような気がしました。自分の能力のありたけを発揮して、世界を変える一端を担いたい。アマゾン社員とはそういう人たちなのです。