企業文化は「社内だけのもの」にあらず: 戦略的企業文化シリーズ5

会社の事業というのは、その会社の力だけで成り立つものではありません。たとえば製造業の場合、資材を提供したり、パーツを提供したり、完成品を運んだり、製品を販売したりしてくれる「パートナー」の存在があってこそ商売が成り立ちます。

サービス業、ホスピタリティ業、小売業、ITサービス業など、どんな業界についても同じことが言えます。

各パートナーの働きが、最終消費者に与える商品、サービス体験やブランド体験を大きく左右します。ですから、「別会社」といえども、「パートナー」として同じ目標を目指す限り、価値観の共有が必要になってくると思います。

例えば、「ビジネスを通して環境問題への解決策を実践する」ことを使命として、「自然環境を守る」ことをコア・バリューとしているパタゴニアのような会社が、環境問題には一切関心がない、利益のためなら何でもする、というような会社から資材を調達したらどうなるでしょう。パタゴニアが掲げる使命の実現はあり得ないことになります。ですから、同じ目的を共有し、共通の価値観をもつ会社と取引することは、企業にとって極めて重要なことなのです。

企業文化は社内だけのものにあらず

言い方を変えると、自社の「コア・バリュー(核となる価値観)」を明確に定めて、それを公にすることは、社会・市場へのアピールにもなり、また、パートナー選びをする上でも効果的なリトマス・テストになります。「世のため、人のためになるコンシャスな(意識の高い)会社」から買いたい、と考える生活者がますます増えている中、企業が自らの在り方を公に宣言し、筋の通った行いをしていくことは、とても大切なことです。