「ふさわしい」企業文化を築く: 戦略的企業文化シリーズ3

前回に、「企業文化は会社によって独自のもの」であるというお話をしました。それを翻すわけではないのですが、様々な企業文化を分析していくと、業種や、その会社がどんな使命を持っているかによって「企業文化のタイプ」が異なる傾向にあることがわかります。戦略的な企業文化を構築するにあたって、自社の使命を実現するには「どんなタイプの企業文化がふさわしいのか」を考える目安として役立ちます。ここでは、代表的なものをいくつか挙げてお話しします。

まず、「家族文化」と呼ばれるタイプの文化がありますが、これは、文字通り、家族意識や仲間意識が強く、柔軟性や自律性などの価値観を重んじる文化です。「家族文化」のリーダーは、面倒見のよい兄貴・姉御肌タイプの人で、仕事以外のことでも親身になて相談にのってくれたりします。

また、製造業やIT業界に多いのは「イノベーション文化」です。その名のとおり、革新、起業家精神、創造性などの価値観を重んじます。失敗を恐れず、新しいものをどんどん開発していくことを重んじる文化です。アップルやフェイスブックのような会社がこの典型的な例です。

そして、セールスやマーケティングを売り物にしている組織に多いのは、「競争に勝つ」ことや「一番になる」ことに価値を見いだす「市場競争文化」です。また、お役所や医療機関などによく見られるのが、「官僚文化」で、なにより安全性や効率などの価値観を重んじます。

ホスピタリティ業界や小売業界など、いわゆる「サービス業」に多いのが「サービス文化」です。「奉仕の精神」を重んじ、「優れた顧客サービス」を掲げるだけでなく、社内での助け合いや思いやりの精神を重視します。アメリカで有名なものとしてはリッツ・カールトンやサウスウエスト航空がありますが、伝統的に、日本のサービス業では、非常に優れたサービス文化が育まれてきたと思います。

そのほかにも、パタゴニアを代表格とする「社会貢献文化」もあります。社会に対する価値創造に焦点を置き、共通の目標のもとに、会社の従業員が顧客やパートナー企業と密接な関係をもち協業して成果を上げることを目指す文化です。

成熟期に達した企業は、どうしても保守的になり、過去の成功を守るという姿勢から、「市場競争文化」や「官僚文化」に傾く傾向にあります。

企業文化のタイプ_dynasearch_01282016

しかし、今日の変化の激しい、混沌としたビジネス環境においては、成熟した企業であっても、「家族文化」や「イノベーション文化」の要素をなくさずに持ち続けることが必要だと思います。

業績の停滞や新たな競合の出現などの難題・苦境を乗り越えるためには、「家族のような緊密なつながり」と「絶えず革新する精神」が必要不可欠になってくるからです。