ペットを売らないペットショップ

オフィスの近くに新手のペットショップができました。
「ペットショップ」とはいっても、「ペットを売らないペットショップ」です。その名も、アダプト・アンド・ショップ(Adopt&Shop)。

犬猫が安全に、幸せに暮らせる世の中づくりを目指す非営利団体、ファウンドアニマルズ(FoundAnimals)が運営するこの店舗は、ペットの里親斡旋としつけ/デイケア/グルーミング・サービスを主に提供しています。

広い店舗の奥にはクラスルームがあり、ペット・オーナーと愛犬が一緒にトレーニングを受けることができます。里親を探しているワンちゃんとネコちゃんの種類も豊富。犬用と猫用それぞれの「面会室」もあり、「この子と一緒に遊びたいんだけど・・・」と店員さんにお願いすると、お目当てのワンちゃんやネコちゃんを連れてきて遊ばせてくれます。

「店員」さんはほとんどが無償で働くボランティア・スタッフ。店の周りを犬を連れて散歩したり、ネコちゃんと一緒に遊んだり・・・。眺めているだけで癒されます。

ここ一年くらいの間に、ロサンゼルスにはペットのしつけやグルーミング・サービスを主とするペットショップがぐんと増えました。と、いうのも、2012年の年末にロサンゼルスでは市の条例で犬、猫、そしてウサギの小売売買が禁止されたからです。ペットを売り物として供給するブリーダーの中には、考えられないほどの粗悪な環境でペットを「大量生産」しているところもあります。ペットショップでペットを「売り買い」するという市場構造こそが、こういった非人道的な行為をサポートすると考え、アメリカやカナダでは30以上にも及ぶ都市が、犬や猫の小売売買を禁じているのです。

アメリカでは年間に300万から400万にのぼる犬猫が殺処分されているといいます。ペットを「小売店舗で購入する」のではなく、「シェルターから引き取る」ということが一般化すれば、無慈悲にも殺されていく動物たちの数を減らすことができます。

アダプト・アンド・ショップでは、犬猫用の玩具やリード、特定の栄養素を補強した高級なペットフードなどの販売も行い、物販とサービスからの収益金はすべて動物の保護活動に寄付されます。大通りに面した店舗は人の目にも触れやすく、清潔なトイレを完備した快適でお洒落な空間は、一度足を踏み入れるとまた訪れたくなります。ウェブサイトには里親を待つ犬猫たちの顔写真と情報がリアルタイムで掲載されているなど、細部に注意が払われていて、「ビジネス」的にも優れていること、またそれらの活動のほとんどがボランティアで賄われていることにとても感銘を受けました。

お店にいる動物たちは、地域のアニマル・シェルターで里親を待つ動物たち。一定期間を過ぎても貰い手が見つからなければ処分されてしまいます。つぶらな瞳を見ながら、そんなことを考えたら胸がキュンと苦しくなりました。魅力的な「お店」がより多くの動物たちと里親の出会いにつながり、一匹でも多くの命が救われることを祈るばかりです。