伝説のハンバーガー・チェーン、成功の秘密は「創業者の想い」にあり

1948年に南カリフォルニアで創業され、現在では295店舗を展開するハンバーガー・チェーン店、イン・アンド・アウト・バーガー(略称イン・アンド・アウト)。

地元民にこよなく愛され、一日のどの時刻に行っても行列ができているくらいポピュラーなお店です。「ハンバーガーは不健康」と日頃は食べないようにしている私でも、月に一度は通ってしまう伝説のハンバーガー・チェーンです。

その成功の秘密は、創業者のシュナイダー夫妻が掲げたビジネス哲学にあります。

“Give customers the freshest, highest quality foods you can buy and provide them with friendly service in a sparkling clean environment.”

「最も新鮮で質の高い食べ物、フレンドリーな接客、そして清潔な環境をお客様に提供する」。

一見、あたり前といえばあたり前すぎるようなことなのですが、この「あたり前のこと」を創業から60年以上が経った今でも忠実かつ厳格に守り続けていることが、イン・アンド・アウトの成功の秘密なのです。

たとえば、「最も新鮮で質の高い食べ物」。

巷のファースト・フード・チェーンといえば冷凍のパティ(ハンバーグ)とポテトの使用が常識ですが、イン・アンド・アウトでは新鮮な食材しか使用しません。そのため、流通センターからその日のうちに食材を届けられないような地域には決して店舗を置かないのです。また、店舗には冷凍庫も電子レンジもありません。ポテトは店内にある専用の機械を使い、じゃがいもを細く切り下ろすところから始めるという徹底ぶりです。

そして、「フレンドリーな接客」。

従業員がハッピーでなくては、お客様をハッピーにする接客はできない。・・・この原則をよく理解し、イン・アンド・アウトではファースト・フード業界では「破格」な10ドル50セントという時給を店舗で接客を始めたばかりの未経験者にも支払います。先日、アパレル大手のギャップが店舗スタッフのスタート時給を11ドルに引き上げるという発表をして話題になったばかりですから、これがいかに高いかがわかるでしょう。

同社の採用ページには従業員さんたちのインタビュー画像。「ファミリー意識」の高い、仲良く楽しい職場であることが伝わってきます。(http://www.in-n-out.com/employment/restaurant.aspx



創業から60年以上が経った今でも、295店舗中219店舗がカリフォルニア州内、州外の店舗がわずか76店舗に留まっているのは、このような創業者のこだわりを頑固に守り続けてきたからなのですね。

より大きな売上や利益を追い、やみくもな拡張に走る企業が多い中、「顧客によかれ、を実践するために何が重要か」を見つめ、確実に実行してきたイン・アンド・アウト。顧客の心を掴んで離さない「愛されビジネス」の秘密はなんとも単純な原則の遵守にあったというお話です。