セリーヌ・ディオンのショーにみるラスベガス経済学

今年の初め頃だったか、ラスベガスに行った際にセリーヌ・ディオンのショーを観て、偉く感激した。あまりによかったので、その後にスタッフと出張に行った際にもう一度観に行った。ウチのスタッフ達にもステージで展開される見事なステージやパフォーマンスを、是非見ておいて欲しいと思ったのだ。

セリーヌ・ディオンといえば、アメリカでは知らない人はいないほどポピュラーな歌手だが、ラスベガスで行われているこのショーは、単なるコンサートとは違う。セリーヌ・ディオンの歌に加え、舞台で繰り広げられるパフォーマンスがすごい。最高の技術を駆使した映像や照明、次から次へと現れる様々なダンスやパフォーマンス。今までに目にしたことのないような、めくるめく世界が展開される。

このショー、1ヶ月くらい前にチケットの予約をしても、なかなか良い席がとれない。セリーヌ・ディオンのパフォーマンスは、シーザースパレスのコロシアムというホールで行われるのだが、いつも満員御礼である。ホールの収容規模は、4,100人ほど。ざっと計算してみると、入場料が平均200ドル(24,000円、$1=120)として、4,000人入ると1回のステージの収入は80万ドル(9,600万円)になる。年間200回行われるので、単純計算しても、80万ドル×200回=160ミリオン・ドル(176億円)となる。このホールの構築には、舞台装置も含め95ミリオン・ドル(104億円)のコストがかかっているそうだが、ショーの5年間の収入は800億ドル(960億円)だから、十分に元は回収できる。ホールそのものは、セリーヌ・ディオン・ショー以外のショーにも利用できるわけだから、設備投資の元もとれるはずだ。

最高の舞台装置、アーティスト、パフォーマーを集めてステージをプロデュースし、しかもそれをわずか200ドル程度で提供できるところというのは、世界広しといえども他にはないだろう。世界中から人が集まれる膨大な収容力を有した「ラスベガス」という特別な環境でなければ成り立たないモデルだ。エンターテイメント業界において、ディズニーがもっともライバル視しているのがラスベガスであるという話を聞いたことがあるが、その意味がよくわかる。

ラスベガスでは次から次へと話題のショーやスポットが誕生するので、出張の際には入念にチェックしていかなければならない。それにしても、最近はギャンブルをする回数もめっきり減って、ショーだけ観て満足して帰ってくることも・・・。ラスベガスの形態もギャンブルからエンターテイメント・ビジネスへと変わりつつあるのだ。