チップ・コンリー氏の新しい本『Emotional Equation(感情の方程式)』がオフィスに届きました!

2012年もはやくも10日が過ぎてしまいましたね。
アメリカでは新年恒例のCES(Consumer Electronics Show)が始まり、TVのニュースもその話題で沸いています。ロサンゼルスにいても、ラスベガスからの熱気が伝わってくるかのようです。

年が明けてから、公私ともども、「新年の志」のようなものをいろいろと考えたり、会社のみんなと話しあったりしていたのですが、今日、新年の読書にふさわしい本が届きました。

『Emotional Equation (感情の方程式)』という本で、ジョワ・ド・ヴィーヴルというサンフランシスコ生まれのホテル・チェーンの創設者であるチップ・コンリーさんが書いた新しい本です。

Emotional Equation (感情の方程式)

前著の『PEAK(ピーク)』は、「意義(Meaning)の追求が企業をピーク・パフォーマンスに導く」というメッセージで、アメリカでは経営書のベストセラーになりましたが、ジョワ・ド・ヴィーヴル社を倒産の危機から「アメリカで最も顧客満足度の高いホテル・チェーン」へと大転換させたその経営手法はザッポスをはじめ世界中の企業で導入されて目覚しい成果を挙げています。

働く人が生き生きとハッピーに仕事に取り組み、最高の成果を発揮できる、そんな環境をつくる経営手法として、特にサービス業の現場で広く取り上げられています。

さて、『Emotional Equation』には、『ハピネスとサクセスを創造するためのごく単純な真実』という副題がついています。

「経営手法」ということにフォーカスをおいた前著『PEAK(ピーク)』とはちょっと毛色の変わった本なのですが、「リーダー自身の意識改革」という点では共通しています。

それは、チップ・コンリーさん自身が、ジョワ・ド・ヴィーヴルという会社を建て直す上で、一度きりではなく幾度も、自らの意識改革に取り組んできたことの表れでしょう。

インタビュー中のチップ・コンリー

10月にコンリーさんが弊社オフィスを訪ねてきてくれた際にこの本についてプレビュー的にちょっと話してもらったのですが、その冒頭が興味深くて今でもよく覚えています。

「経営において行き詰まりを感じた時に、普通の人はMBAのクラスを受けたり、経営書を手にとったりするようなのですが、私の場合はどうも心理学の本に心ひかれるようなのです」

現在もなおアメリカを蝕んでいる(むしばんでいる)不況はホスピタリティ業界にも大きな打撃を与えていますが、そこでチップさんが手にとったのは、ナチス・ドイツの強制収容所に送られながら危うく死を免れたユダヤ系オーストリア人、ヴィクトール・E・フランケル氏の『夜と霧』でした。

著者のフランケル氏は、心理学者として強制収容所での生活を体験しながら、「人間の尊厳が奪い取られた極限状況においても、なぜ人は生きる希望を見出すことができるのか」ということについて考え、「人生の原動力とは『意義』である」という結論に達します。

本を書くに至ったインスピレーションについて、チップさんは次のように語っています。

「『夜と霧』の教訓を、毎日唱えることができるおまじないのようなものとして方程式に直したかったのです」

例えば、「不安」は、「不確かなこと」と「無力感」を掛け算したものだとチップさんは言います。人生において「わからないこと」、「自分のコントロールが及ばないこと」はつきものですが、この二つにフォーカスをおけばおくほど不安は倍増します。

だから、不安に苛まれる(さいなまれる)ときは、「わかっていること」、そして、「自分のコントロールが及ぶこと」にフォーカスをおき、最善を尽くすことが、不安から脱却する上での最良のレシピだ、とチップさんは言うのです。

企業リーダーとしては、感情的知性を養うことが極めて重要だ、とチップさんは言います。「CEO」は、「Chief Executive Officer(最高経営責任者)」ならぬ、「Chief Emotions Officer(最高感情責任者)」であると。CEOは会社の中の感情のバロメーターみたいなものであって、リーダーが「不安」などの感情を持っていると、それは組織内に必ず伝染する、と。

「ある時、ジョワ・ド・ヴィーヴルでリーダー的役職にある社員が集まる会議があったのですが、会場に足を踏み入れて私が真っ先に感じたのは『不安』でした。そこで私は、会議の議題にあがっていた実務的な話をするよりは、まず、この『不安』を取り除くことが先決と考えて、先ほどお話した『不安』の方程式、という話をみんなにしたのです」

会社のリーダーが、自分やあるいは自分と一緒に働く人たちの「感情」に対して敏感になること、そして、ネガティブな感情を打開に導くプラクティカルな手法を身につけておくことはとても重要だとチップさんは語ります。

私も、2012年の研究課題として、「人間の『感情』という動力に着目した経営」に大いに注目しているのですが、チップさんの『Emotional Equation』はそういった意味でも非常にタイムリーな本であると思います。

日本語訳される予定があるのかわかりませんが、一日も早く日本でも出版されて、多くの人に手にとっていただきたいものです。

2012年4月3日、アメリカ西海岸にて、チップ・コンリー氏を交えて『PEAK(ピーク)経営セミナー』を行います。チップさん本人も登壇し、ジョワ・ド・ヴィーヴルの社員の人たちから現場のお話も聞ける貴重なセミナーです。詳細はこちら