チップ・コンリー氏インタビュー:『ピーク(PEAK)経営』とは?

「社員ハピネス+顧客ハピネス」の両立を実現し、ブレークスルー的成果を上げている多くの米国企業が学び、実践する「ピーク経営」。企業文化を柱とした型破り経営で知られるザッポス社で、リーダー養成プログラムの教材にもなっている経営書『PEAK』の著者、チップ・コンリーさんが、ダイナ・サーチのオフィスに来てくれました。

チップ・コンリー

チップ・コンリーさんは、ライフスタイル・ホスピタリティ・コンセプトのパイオニアである『ジョワ・ド・ヴィーヴル』ホテル・チェーンの創設者兼会長でもあります。わが社ダイナ・サーチのスタッフが、9月にジョワ・ド・ヴィーヴルの本社に訪問したのをきっかけに、チップさんとメールや電話での交流が始まりました。

面と向かってお会いするのは初めてでしたが、本に書いてあるとおり、また、『TED』の講演映像で拝見するとおりの、物腰柔らか、かつ表情豊かなジェントルマンでした。約90分にわたって、ピーク経営について、チップ・コンリーさん自身の経営者としての経験について、そして、来年1月に発売される新著についていろいろとお話を聴きました。とても考えさせられることが多いお話でしたので、今日から何回かに分けて皆さんと共有したいと思います。

ところで、「アップル・ストア」は、ピーク経営の考え方に基づいてデザインされたということをご存知ですか。

「アップル・ストア」の生みの親であり、「天才マーチャンダイザー」として誉れ高いロン・ジョンソン氏は、なんとチップさんのスタンフォード大学時代の学友だそうです。ジョンソン氏は、ユニークなマーチャンダイジング・コンセプトで有名なアメリカのマス・ディスカウンター、ターゲット社で働いていたところをアップルに引き抜かれたのだとか。

ピーク経営は、心理学者マズローの自己実現理論(『人間とは自己実現に向かって絶えず成長する生き物である』)を会社経営にあてはめたものです。マズローが考案した欲求階層を簡略化し、「社員、顧客、投資家」という三つのステークホルダーについて、「最も高度な欲求(自己実現)」の充足を目指すことにより、ピーク・パフォーマンス(最高のパフォーマンス)が得られる、という考え方です。

アップル・ストアの場合は、チップさんが言うところの「顧客ピラミッド」を店舗デザインと経営にあてはめたものだそうです。顧客の欲求階層は、「期待の充足⇒願望の充足⇒未認識のニーズの充足」ですが、このうち最も高度な欲求(顧客自身にもまだ認識されていない欲求)を満たすことにより、熱烈なファンをつくることができる、というのが、ピーク経営の考え方です。

「顧客が口には出さないけれども、欲しがっているもの」を追求した結果、考案されたのが、アップル・ストアの中にある「ジーニアス・バー」などのサービスであったということですね。

「マズローは、人生の『ベスト・プラクティス』に焦点を置いた最初の心理学者だったのですよ」

というチップさんの言葉がとても印象的でした。

「それまで、心理学者というのは、人間の心の『闇』の部分に着目して、『どうやって心の病を治すか』ということを探求していたのです。しかし、マズローは、そこで180度発想を転換して、人生の達人たちの生き方を研究し、『最善の人生を生きる秘訣』を解き明かそうとしたのです」

その結果、マズローが辿りついた結論が、「最も高度な欲求(自己実現)の充足を目指す」ということだったということなのです。

チップさんの経営するホテル・チェーン、ジョワ・ド・ヴィーヴルは、2001年のネット・バブルの崩壊と同時多発テロ以降、旅行産業が75%縮小したサンフランシスコ・ベイエリアにおいて大きな打撃を受けました。その中で試行錯誤し、「人としての自己実現」の考え方を、「会社としての自己実現」として応用することはできないか、と自問自答した後に考案したのがピーク経営であったといいます。

ピーク経営を取り入れて以来、ジョワ・ド・ヴィーヴルは3倍の成長を遂げ、今日では、社員満足、顧客満足の極めて高いホテル・チェーンとして知られています。

国籍や人種に関係なく、『自己実現を目指す』という欲求はユニバーサルなものです。そういったユニバーサルな理論に基づくピーク経営は、米国に限らず南米、欧州、そしてアジア諸国の経営者にも学ばれているそうです。

ダイナ・サーチでは、『ピーク経営メソッドを学ぶ!セミナー』の開催を予定しています。詳細が知りたい方はこちらをご覧ください。