もう随分前のことになりますが、10月20日はザッポスの2010年第4四半期オール・ハンズ・ミーティング(全社員ミーティング)でした。
その名の通り、社員全員を招いて行われるミーティングですが、当然ながらラスベガス(本社)とケンタッキー(物流センター)とで分けて行われます。かつては、年に一度だったのですが、今年に入ってからは四半期に一度行われています。
「年中無休」を謳うザッポスのCLT(コンタクトセンター)ですが、このミーティングの間だけは休みになります。それくらい、ザッポスでは重要と捉えられているミーティングです。
私が『ザッポスの奇跡』を書いた時は1,300人程度だったザッポスの社員数も、今では2,000人近くになりました。本社ラスベガスにいるのはそのうち1,000人くらいですが、1,000人の社員が一堂に会するとなると、かなり大きな会場でなくてはなりません。今回は、ラスベガスの大通り(“ストリップ”)にあるMGMグランドのカー・シアター(シルク・デ・ソレイユの「KA(カー)」の専属シアターです)で行われました。
毎回、財務発表をはじめ、ザッポス社内の部門が取り組んでいるスペシャル・プロジェクトについての報告、著者、その他各界著名人を招いての講演、そして、ザッポスならではの社員参加型ゲームやアクティビティが行われます。
しかし、今回のミーティングのハイライトは、なんと言ってもCFOアルフレッド・リンの退任でしょう。
アルフレッド・リンの退任は、今年の3月から既に明らかにされていたことでもあり、会場にはしんみりとした雰囲気はありませんでした。
トニー、フレッド、そして、アルフレッドの後任であるクリス・ニールセンをはじめ、社員からのお別れのメッセージを集めた映像が流され、そして、最後はザッポスの伝統にのっとり、グレイ・グース・ウォッカのショットで乾杯が行われました。
ところで、私にとって最も印象深かったのは、新任CFOクリス・ニールセンを交えての質疑応答セッションでした。
全社ミーティングでは、社員から寄せられる質問に、経営陣がライブで答えます。どんな質問でもよいというのも、ザッポスならではです。
その中で、クリス・ニールセンに次のような質問が投げかけられました。
「アマゾンの文化の中で、ザッポスにも学んでもらいたいと思うことがあるか」
これに対するクリス・ニールセンの回答は、「常に今日が始まりである」という精神でした。
クリス・ニールセンは、「両社の価値観は似通っているし、ザッポススにも、『謙虚であれ』といった価値観があるが・・・」と前置きをした上で、「自分たちはとても長い旅路の途中にいるのだということ。これまでやり遂げてきたことに関して達成感や誇りをもつのはいいことなのだが、未来に向けて、常に緊張感を忘れないことが大切だと思う」と語っていました。
アマゾン買収以降、ザッポスの企業文化や体制に変化はないのですが、私も、本社を訪れるたびに、いろいろな意味で、「ちょっと余裕が出てきたのかな・・・」と思っていた矢先でした。クリス・ニールセンの言葉は、やんわりとではありますが、「安泰ムード」になってしまったザッポニアンへの戒めのニュアンスも含んでいるのかな・・・と思わずにはおれませんでした。