スカイモールの倒産と、「時代の終わり」

2015年1月23日(金)、スカイモールが、会社更生法による保護を申請した。

スカイモールといえば、おそらくアメリカに住んでいる人で、飛行機に乗ったことのある人なら誰でも知っている。国内線の便の席のポケットに入っているカタログの会社である。ひとことでいうと、「カタログのカタログ」であり、アメリカのありとあらゆるカタログの会社からのセレクト商品が200ページ強の冊子の中に満載されている。したがって、「スカイモール(空飛ぶショッピングモール)」。上空1万メートルを飛びつつ、自由自在にお買い物ができるというわけだ。

「パートナー」であるカタログ通販会社が在庫をもち、オーダーフルフィルメント業務を担当するから、スカイモールとしては商品をカタログに載せるだけ。また、飛行機の中にカタログを置くのだからカタログ送料もかからない。おまけに、脚をやっと伸ばせるかどうかの狭い空間の中に数時間単位で閉じ込められた「囚われの顧客」たちがカタログを見てくれるのだから、こんなにぼろい商売はない。

しかし、そのスカイモールが倒産するという。なぜか?ずばり、「時代は変わった」からだ。飛行機の中の旅客は、もはや、「囚われの顧客」ではない。

ネットやWi-Fiなどの通信技術、タブレットやスマホなどのモバイル端末が発達した結果、離着陸のごく短い時間を除いては、旅客がデジタル機器を使用し、各々思い思いの活動をすることが可能になった。仕事柄、かなり頻繁に飛行機に乗るが、ノートブックPCを広げて仕事にいそしむ人はもちろんのこと、キンドルで電子書籍を読む人、iPadのようなタブレットでゲームに没頭する人、アニメを見て喜んでいる子供たちの姿など、今日、「空の旅」の楽しみ方は文字通り十人十色である。

かつて、飛行機に乗っている時間というのは、多くの人にとって「ムダな時間」であり、「ヒマな時間」だった。「ヒマ」をつぶすために、スカイモールのような媒体は最適だったのである。ひところ、スカイモールは一回あたり1,600万部を発行するだけで、推定5億人に読まれていたという。そして、一件あたり平均110ドル、年間に70万件の発注があった。

飛行機の中で、「ヒマつぶしに読む」という活用のされ方を考慮に入れてか、セレクト商品はトラベル商品、アイデア商品が中心、中にはジョークとしか思えないようなグッズも多かった。旅行者が思わずノリでオーダーしてしまったり、「ねえ、これ見てよ」とカタログを持ち帰って家族や友人に見せるように促す「話題性」を意識したのだろう。

2013年には30億円以上だったスカイモールの売上は、昨年には半減していたという。アメリカでは一般の紙カタログは案外元気がよく、ネット通販から始まった販売業者の中には紙カタログの発行に着手しているものもいるくらいだが、スカイモールの場合、「時代の波に押し流されてしまった」といえそうだ。その歴史をしのんで、アメリカのニュースサイト、Business Insiderが、「スカイモールが売った歴代で最もバカバカしい商品11点」という記事を書いている。ここにリンクを貼るので、皆さんにも楽しんでもらうとともに、ひとつの時代の終わりの感慨にふけっていただきたい。

Business Insiderの記事へ:「11 Of The Most Ridiculous Items Sold By SkyMall」