あのアマゾンがザッポス化???

ネット通販では世界最大の規模を誇るあのアマゾンが、フルフィルメント・センターを辞めたい従業員にボーナスを支給するという。

1年目には2000ドル、勤続年数が一年増えるたびに1,000ドルがさらに加算されていき、最大5,000ドルにまでなるというこのプログラムは、2009年にアマゾンが買収したネットの靴販売会社ザッポスの「採用辞退プログラム」に酷似している。企業文化の育成と維持を「最優先の経営戦略」として位置付けるザッポスは、厳しい採用の網目を潜り抜けて入社してきた社員に、新入社員研修中に2,000ドルの「採用辞退ボーナス」を提供している。「ほんとうは辞めたいけれどお金のために働いている」という社員をなくすことが狙いだ。

「もちろん、従業員に辞めて欲しいわけではない。このボーナスの狙いは、従業員に『この仕事がほんとうに自分の望むことなのか』と今いちど考える機会を与えること。最終的には、嫌々ながら働き続けるのは、従業員自身にとっても会社にとっても良いことではない」と、CEOジェフ・ベゾスは今週リリースされたばかりの投資家への手紙の中で語る。

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この制度がいつ導入されたのかは文面からは定かではないが、新しいものではないようだ。しかし、ザッポスの制度を学んだものであることは明記されている。2009年に買収が報道されたとき、ザッポスが「アマゾン化」するのでは・・・?と危惧する声が盛んに聞かれたが、あれから5年が経った今、ザッポスは依然として独自の企業文化を保ち続けている。それどころか、今となっては「親」会社であるアマゾンを感化しつつさえあるということか。

アマゾンといえば、皆さんもご存知のように、アメリカをはじめとして世界各地のフルフィルメント・センターで労使問題が表面化している。先ごろ、ドイツのフルフィルメント・センターではこれまでで最大のストライキが決行されたことが大きく報道された。

CEOジェフ・ベゾスは、2013年に役員にあてて「Amazon.love」と呼ばれる文書を送っている。その中で同氏は、世の中の会社を「かっこいい会社」と「かっこ悪い会社」に分け、それぞれの要素を分析した。その中で、「弱い者いじめをする会社」は「かっこ悪い会社」であるとジェフ・ベゾスは明言している。当然のことながら、この文書の要点は、「かっこ悪い会社と思われるのはビジネス的にもよくない。我々は、かっこよいと思われる会社を目指そう!」というものだ。

会社が大きくなればなるほど、社会に与える影響は良くも悪くも大きくなる。一挙一動が吟味されることは否めない。かつては「貧しき者」の味方であったウォルマートも、巨大化して「小さき者の敵」と恐れられるようになったが、それと同様な危険性をアマゾンは秘めている。「辞めたい人はどうぞお辞めください」と大金を差し出すアマゾンのボーナス制度は、「弱者を搾取する会社」という汚名を免れ、「かっこよい会社」として認知されようというアマゾンの努力のように思えてならない。