嵐を呼んだザッポス新社屋のオープニング・セレモニー

2013年9月9日、待望のザッポス新社屋オープニング・セレモニー出席のために、ラスベガスに行ってきました。

ザッポスの新社屋は旧ラスベガス市庁舎。10階建てのタワーと3階建ての別棟がほぼ円形をかたちづくるユニークな形の建物です。2012年夏から約1年をかけ、約6,000万ドルを費やし改築されたビルは、LEEDグリーン・ビルディング認証を控えた環境にやさしい建物であるほか、あらゆる工夫が施されています。

 

「WOWのサービス(人を驚嘆させるサービス)」と「楽しくて、ちょっと変わったこと(Fun and a Little Weird」をコア・バリューに掲げるザッポスのことですから、ごく普通のセレモニーであるわけがありません。期待を裏切らず企画されたのは、なんと、「世界最大のテープカット・セレモニー」です。

1,500人の社員がすべて参加し、それに来賓を含めて総勢1,600人以上が同時にテープをカットするという趣向です。さすが「社員全員参加型」の会社、ザッポスならではの民主的なセレモニー。受付では、参加者のバッジと共に、ザッポスの名入りのハサミが配布されました。



ロビー入口付近にはレゴで作られたザッポスのロゴが来客を迎えます。「Zappos」という文字の周りの白い部分に社員たちが思い思いにレゴをはめ込めるようになっているのですが、これは、「私もザッポス・ファミリーの一員!」という象徴だそうです。このあたりの工夫もザッポスらしくて心憎い!

 

これは、新社屋をかたどったお祝いのケーキ。・・・隣に何気なくラマが鎮座しているのは・・・なぜでしょう?

 

屋外の大掛かりなセットアップとは打って変わって、意外と地味な記者会見には、CEOのトニー・シェイとザッポス創設当初からのエグゼクティブ、フレッド・モズラーが出席したほか、今回の本社移転の立役者であった前ラスベガス市長オスカー・グッドマン氏と現市長キャロライン・グッドマン氏も出席していました(両氏はなんとご夫婦)。

 



記者会見が終わり、待ちに待ったテープカット・セレモニーの瞬間が迫ります。

建物中央のプラザ。二階、三階の屋外エリア一杯に詰め掛けたザッポニアン(ザッポス社員)たち。この記念すべき瞬間をカメラに収めようと駆けつけた全米ネットワークの報道陣の姿もたくさん見られました。

 

 

ギネス・ブックに「世界一」として公式に記録されるためには、セレモニーに参加している人たち全員が一斉にテープを切ることが必要なのだとか。CEOのトニーがカウントダウンの音頭をとります。その横には・・・、あれ?いつの間にか、ここにもラマが・・・。

 

ザッポスの歴史の中に、再び、記念すべき瞬間が新たに刻まれました。

セレモニーが終了し、いよいよ新社屋内お披露目の時間がやって来ました。「Scavenger Hunt(宝探しゲーム)」の始まりです。

新社屋の各所に設けられたチェックポイントを訪れ、スタンプを集めてまわります。スタンプをすべて集めると景品がもらえるという仕掛けです。なにせ10階もある広い広いキャンパスですから、このようなゲームを通して、社員に新社屋に馴染んでもらおうという思惑なのです。

 

引越しが始まったばかりのザッポスのオフィスには、社員の健康と生産性を考慮した様々な仕掛けが散りばめられています。まずは最近、テック企業のオフィスにはつきものの、「落書きできる壁」。



デスクは昇降式で、各社員が好みに合わせて高さを調節できるようになっています。最近、アメリカでは「一日中座ってばかりのオフィスワークは喫煙と同じくらい健康に悪い」という研究結果が発表され、オフィス内のウェルネスに対する注目がますます高まっています。このデスクであれば、立って作業ができるくらいの高さにも調節することができるのです。

コンタクトセンターの写真を撮っていたら、ちょっと見慣れないものを見かけました。

デスクの脇に置くサイド・キャビネット。そのてっぺんの部分がクッションになっていて、座れるようになっているのです。



ザッポスのコンタクトセンターは、チーム体制が非常に強固なことで有名です。チームリーダーは「コーチ」として活躍し、週に一度、各チームメンバーと約30分の面接を持ちます。

つまり、デスク周りで簡単な面談やコーチング・セッションを行う機会が大変多いわけなので、その際に便宜が良いように、デスクに訪れた人がキャビネットを引き出し、それを椅子がわりに使えるようになっているのです。以前はいちいち自分のエリアから椅子を持ってきていたりしていたのですが、それでは面倒だ、という社員の声を聞いて、ザッポスが特注で作らせたものらしいです。

仕事場を快適にしようというそんな工夫に感激し、ううん、と思わず唸ってしまいました。

エレベーターの中にはタッチスクリーン・モニターがあり、ゲームをして遊べるようになっています。これも、エレベーターに乗り合わせた社員同士が交流する機会をつくろうという、ザッポスの工夫。

ところで、新社屋でのイベントがそろそろ終わりに近づいた頃、空はにわかに掻き曇り、外は大嵐になっていました。

強く打ちつける雨と強風にびっくりするラマと、それをなだめにかかる人々。



ザッポスの新社屋お披露目にふさわしいハプニングです。

ところでザッポスのイベントには動物が頻繁に登場します。2011年のベンダー・パーティ(取引先を招いて行うパーティ)に登場したのはたしかキリンでしたし・・・、それがたまたま今回は「ラマ」だったということでしょうか。

ようやく雨が小降りになったので、新社屋裏手のパーティ会場に移動。

パーティ会場の「ゴールド・スパイク」は寂れたホテル兼カジノであったのをトニー・シェイ率いるダウンタウン・プロジェクトが買い取り、その一階は今ではお洒落なバー&レストランになっています。二階から上をコンドミニアムに改装して運営する計画があるらしく、現在は、ダウンタウン・プロジェクト・スタッフが寝泊りしているとか。

 

強風は去ったものの、まだ、小雨がちらつく中、屋外で談笑に興じているトニーを見かけました。Tシャツもずぶ濡れですがそれをものともしません。「ザッポス」という会社のCEOとしてだけではなく、いまや、新しい形の都市開発のパイオニアとして各界から注目を浴びるトニーですが、新社屋のオープニングという節目を迎えてさぞかし喜ばしく、爽快な気分を味わっていることだろうと想像しました。



嵐を呼んだザッポス新社屋のオープニング・セレモニー。滅多に雨が降らないラスベガスで嵐は幸先の良い徴だと地元のメディアは報じました。一時、飛行機が欠航してロスに帰れないのではと危惧したりもしましたが、この歴史的瞬間に居合わせることができ、私としても非常に思い出深い一日になりました。