ネット通販のフルフィルメントの真髄をつく!ザッポスの次世代型フルフィルメント・センター

(2011. 2. 16)

ケンタッキーにある、ザッポスのフルフィルメント・センターに行ってきました!

ザッポスのフルフィルメント・センターの主、クレイグ・アドキンズ氏には、過去にラスベガスの本社で一度会う機会があり、その時から、「是非ケンタッキーに来てください!」とのお招きを受けていたのです。

ザッポス社のケンタッキーにあるフルフィルメント・センターを統括するクレイグ

ザッポスのフルフィルメント・センターは、ルイビル郊外のシェパーズビルという町にあります。ロサンゼルスからルイビルまでは直行便があまりないため、一回乗り継ぎをして、一日がかりでケンタッキーにたどり着きました。

クレイグに再会してみてまず実感したのは、フルフィルメント・センターに注ぐ彼の愛情です。

まるで自慢の子供について話すように、センターについて語ってくれました。

クレイグは、米国海軍で20年を過ごしたのち、自動車機器メーカー大手YAZAKI(矢崎産業)に入社、その後、オペレーション・プロセス・スペシャリストとしてアマゾン・ドット・コムで物流を手がけた輝かしい経歴の持ち主です。

「ヘッドハンターから誘いの声も多いのだけれど、『悪いけど、話を聞く必要もない』と断っています。私はこの仕事が楽しくて仕方がないんです。たとえ、お金を一銭ももらえなくても、この仕事をずっとやっていたいと、本気でそう思います」

と、少年のように目を輝かせる彼の姿に、私は感動さえ覚えました。

シックス・シグマやKAIZENなどのオペレーション・プロセスの専門家として、アマゾンに望まれて入社したクレイグは、忙しい毎日を送っていました。ザッポスに入社したのは、実は、「引退を視野に、スローダウンしたかったから」だといいます。

ザッポス入社は2005年。当時、ザッポスの売上は3.6億ドル、倉庫面積も28万平方フィート程度のものでした。

しかし6年たった今、ザッポスは年商15億ドル(推定)の会社へと成長し、フルフィルメント・センターの規模も100万平方フィートを超えるまでに拡大しました。

「『スローダウン』するどころか・・・、その正反対ですね」

その笑顔はとても誇らしげです。

ザッポスのフルフィルメント・センターにてクレイグと

「・・・ところで、フルフィルメント・センターとディストリビューション・センターの違いがわかりますか?」

インタビューの本題に入ってすぐ、クレイグは真剣な表情で切り出しました。

「ディストリビューション・センターというのは、『流通センター』。つまり、ウォルマートのような大型小売業が、複数の店舗に『流通』させる在庫をひとまとめにして管理している施設を指します。よく見落とされがちなことですが、『流通センター』のオペレーションと、ネット通販のフルフィルメントのオペレーションはまるで違う。『流通センター』のオペレーションの考え方では、ネット通販に必要な条件を満たす施設をつくることはできないのです。」

しかし、いわゆる「ネット通販」に対応する業務を行っているセンターの多くは、いまだに、「流通センター」のオペレーションの理論に基づいてデザインされている、とクレイグは指摘します。

Ub|XZ~i[「『流通センター』のオペレーションの経験を積んだ人たちが、ネット通販という新しいチャネルが誕生したときに、必要に迫られて物流センターの立ち上げや設計を任されたのです。だから、無理はありません。世の中に存在する『フルフィルメント・センター』の多くは、実は『フルフィルメント・センター』ではない。『流通センター』の亜流にしか過ぎません。でも、ザッポスでは、ネット通販のお客様が求めていることは何か・・・それを突き詰めてセンターを設計してきた。『流通センター』の常識にはとらわれていないのです。だから、ザッポスの『フルフィルメント・センター』は、真の『フルフィルメント・センター』なのです。」

「企業の視点ではなく、顧客の視点から考えてつくられたフルフィルメント・センター」、そして、「人間(働く人、顧客)への優しさや思いやりを基盤に運営されているフルフィルメント・センター」が、クレイグとのインタビュー、そして、ザッポス・フルフィルメント・センター訪問のテーマになりました。

次回は、顧客の視点から書かれたWMS(倉庫マネジメント・システム)という話から始めたいと思います。

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