ザッポス本社がラスベガス市庁舎に移転!

(2010. 12. 6)

「ザッポス本社がラスベガス市庁舎に移転」

私がその知らせを受け取ったのは、ザッポス社員のつぶやきを通してのことでした。2008年6月に初めてザッポス本社を訪ねて以来、同年9月に行った一週間の取材旅行を通し、親しくなったザッポス社員の人たちとは今も懇意にしていて、彼らのつぶやきをフォローさせてもらったりしています。

トニーをはじめ、ザッポス社員のつぶやきにジョークが混ざっていることは珍しいことではありません。例えば今年のエイプリル・フールには、「ザッポスがウォルト・ディズニーに対し訴訟申し立て!」というつぶやきが流れました。

それは、ザッポスが、ディズニーランドの「地球上で最も幸せな場所」という宣伝文句に異議を申し立て、「我々(ザッポス)こそが、『地球上で最も幸せな場所』である」ということを主張するものだったのですが、もちろんまったくのジョークであり、作り話でした。

ザッポスが移転するラスベガス旧市庁舎

トニーをはじめザッポニアン(ザッポス社員)たちのジョーク好きをよく知っている私は、「ザッポス本社がラスベガス市庁舎に移転!」という今回のつぶやきを目にしたときに、すぐ、「エイプリル・フールでもないのに、またジョークか・・・」と思ってしまったのです。

しかし、つぶやきについていたリンクをクリックしてみると、それはジョークではありませんでした。

現在、ザッポスの本社は、ラスベガス郊外のヘンダーソンという町のビジネスパークの中にあります。2008年の取材時には、それまで一棟だけ借りていたのを二棟に増やしたばかりで、つい最近、三棟目を借りる準備を進めていたことは知っていました。そして、それも来年末までには手狭になるというので、「さて、どうするのかな・・・?」と他人事ながら気になっていた矢先だったのです。

ザッポス本社が2012年を目処に現ラスベガス市庁舎に入居するというのは、12月1日にラスベガス市議会で可決され、そのニュースが報道されました。ラスベガス市長は、「ラスベガスに大きな変革をもたらす」ものであるとして、トニー・シェイ率いるザッポスの地域社会に対するコミットメントを称賛しました。

真夜中にもまるで昼間のように眩しいきらびやかなカジノや高級リゾートが立ち並ぶ「ラスベガス・ストリップ(大通り)」とは裏腹に、ひっそりとうら寂しいダウンタウン地区。多くの人にとって、「ラスベガスに行く」とは、「ストリップ(大通り)近辺に宿泊する」ことを意味するのであり、「ラスベガスに行った」ことのある人たちでも、ラスベガスのダウンタウンに足を踏み入れたことのある人は少ないでしょう。

私自身の記憶を辿ると、30、40年前のラスベガスというのは、まだダウンタウンが中心だったのです。1967年に公開されたクレイジーキャッツ主演映画『クレイジー黄金作戦』でも、ラスベガスのダウンタウンのシーンがたくさん登場します。

それが、「ストリップ(大通り)」の開発に押されて、すっかりさびれてしまったのです。ダウンタウン地区の活性化を目指して、ラスベガス市は、2007年ごろから、約550万ドルを投資し、道路の舗装や歩道の整備、ネオンサインや街頭の設置など環境整備に努めてきました。その努力が実り、近年、バーやレストラン、コーヒーショップなどの飲食店などがいくつか立ち並ぶようになったのですが、これに新しい息吹を吹き込むのが、ザッポス本社の移転であるというわけです。

Ub|XZ~i[ザッポスの本社移転の展望には、ただ単に、「本社を現市庁舎に移転する」というだけでなく、それに隣接する7エーカー(約8,500坪)の区域の開発も含まれています。具体的なことはまだ語られていませんが、本社で働くザッポス社員が、より密接に融合したワーク/ライフを楽しむための環境づくりであることは間違いありません。

ウェブの普及や発展を通して、生活者が主役となる「ソーシャル」の時代には、企業が社会と融合し、「わが身によかれ」ばかりではなく、「社会によかれ」を考え、行動していくことが求められる時代になっていると思います。ザッポスは、これを身をもって、実践して、お手本を見せている会社なのだと、改めて確信を新たにさせられた出来事でした。

2012年までにはまだ間がありますが、お祝い好きで、何より人を「WOW!」と言わせることが大好きなザッポニアンたちが、いかにラスベガスのダウンタウン地区を「活性化」していくのか、この目で確かめるのが今からとても楽しみです。

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