ザッポスは人事でもWOW!

(2010. 10. 26)

10月8日に終了した「第二回ザッポス・エクスペリエンス・セミナー」報告の最終回は、人事におけるWOW(驚嘆)です。

「人事部」といえば、アメリカの会社ではなにかと畏怖の念をもって見られる一種特殊な部門ですが、ザッポスの場合は違います。

まず、ザッポスの人事部は、採用、解雇、業務評価など、人事に関する意思決定を下す部門ではなく、むしろ、各部門長やマネジャーに対して、人事関連のアドバイスを提供する部門なのです。

それには、ザッポスでは、各部門を事業部門や独立した会社のように捉えているという背景があります。つまり、部門長は「社長」、そしてマネジャーは「支社長」のような感覚なのです。

ですから、ザッポスでは、人事に関して、部門長やマネジャーが意思決定を下します。例えば、企業文化に合わない人を解雇するという際、「解雇」という意思決定を下すのは部門長やマネジャーですが、それにまつわるリスクなどを考慮しつつ、適切なアドバイスを与えるのが人事部ということになります。

あえて言うと、唯一、人事部が絶対的な拒否権をもつことがあります。

それは、採用時のカルチャー・フィット(文化適性)に関する判断です。

『ザッポスの奇跡』を読まれた方はご存知だと思いますが、ザッポスでは、採用時に「カルチャー・フィット(文化適性)」と「スキル・フィット(技術適性)」という二つの観点から判断を下します。「カルチャー・フィット・インタビュー」と呼ばれる面接で求職者の文化適性を判断するのは人事部の仕事ですが、そこで「ザッポス・カルチャーに合わない」と判断された人は、採用のプロセスにおいてその先に行くことはできません。

これは、たとえCEOの推薦で面接を受けた人に関しても同様だそうです。「私は、トニーに対しても、何度もNOと言ったことがあります」と、質疑応答に応じてくれたシェリルさんは言っていました。

セミナーで質疑応答に答えるザッポス人事のシェリルさん

さて、ザッポスのコア・バリュー第一カ条は、「サービスを通して、WOW(驚嘆)を届けよ」ですが、ザッポスでは、CLT部門(コンタクトセンター)ばかりではなく、人事部もこれを実践しているといいます。

人事におけるWOWって、何だろう? と、皆さん疑問に思われるかもしれません。

例えば、ザッポスでは、人材募集に関して問い合わせを送ってきた人すべてに必ず返答するそうです。

世界的に有名になってしまった今、ザッポスの入社試験は、かのハーバード大学にも勝る「狭き門」。ハーバードの合格率が5%であるのに対して、ザッポスは1%といわれています。

今年の応募者は、十月の時点ですでに28,000人を越えているそうですから、これらすべての人に返信するというのはかなりの作業量です。

しかし、それだけではありません。例えば、入社試験に落ちた人から、連絡が来たとします。「私のどこが悪かったのですか。次に面接を受ける際には、どんな点に留意したらいいですか」そういった質問にも丁寧に答えて、個人的なアドバイスをあげるというのです。

Ub|XZ~i[ザッポスの人事哲学のひとつに、「ザッポスに合わない人でも、きっとどこかでスーパースターになれる」という考え方があるそうです。ザッポスの入社試験に落ちた人は、「ザッポスの企業文化や価値観にそぐわない」というだけで、他の会社では貴重なアセットとなりうるスキルや考え方を持っています。だから、そういう人たちのために、人事の専門家としての立場から、面接スキルやキャリア選択のアドバイスをしてあげるのだそうです。

また、ザッポスの人事担当者が持っているネットワークを通じて、ザッポスの本社があるラスベガス近郊の会社に紹介してあげたりすることもあるそうです。普通の会社であれば、「人材を他の会社に紹介してあげても、うちの会社には一文の得にもならない」と考えることでしょう。けれども、ザッポスは違います。

「採用」という接点において、「WOW(驚嘆)」の体験をした人が、もしかしたらザッポスのお客さんになるかもしれない。その体験を人に話すかもしれない・・・。いつ、どこで、誰が、「お客さん」、あるいは、「社員」になるかわからない、人と人との関わりあいで成り立っているビジネスのエコシステム(生態系)とそれを健やかに保っていくことの重要性を、ザッポスは心得ているのです。

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↑ ザッポス社内で行われたハロウィーン仮装パレード

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