ザッポスCEOトニー・シェイいわく「リーダーとは建築家のようなもの」

(2010. 10. 12)

2週間ほど前にサンタモニカで行われたトニー・シェイの公開講演について、これまでシリーズでブログを書いてきましたが、今日はその最終回です。

聴衆を相手に熱弁するザッポスCEOトニー・シェイ

アマゾンに買収されて以来、すさまじいスピードで社員の人数を増やしてきたザッポスですが、ラスベガスの本社とケンタッキーの物流センターで働いている社員の総数は目下約2,000人。来年の末には、3,000人を超える見通しであると聞きます。

組織が大きくなれば大きくなるほど、懸念されてくるのが企業文化の維持。サンタモニカの講演時に、オーディエンスから寄せられた質問のひとつも、それに関連するものでした。

「組織が大きくなると、企業文化の維持が難しくなると思うのだが、それについてリーダーとしてはどう考えているのか。また、仮に、あなたほど多大な影響力をもつCEOがいなくなったと考えて、『トニー・シェイ不在のザッポス』は、ザッポスであり続けることができるのか」

実は同じような質問を過去に私も投げかけたことがあり、トニーはその時も同じように答えていました。「リーダーとは建築家のようなもの」という答えです。

「会社を温室に例えるとすると、たいていの会社のCEOというのは、その中で一番大きく、一番力強い植物です。けれども、僕は、会社における自分の役割をむしろ建築家のようなものとして捉えています。つまり、自分の役目は、権力を誇示したり、行使したりすることではなくて、温室の中の植物がすくすくと育つような環境をつくることです」

長期的に維持可能な企業文化をつくるには、リーダーは決して「一番力強い植物」であってはならない、とトニー・シェイは語ります。

「もし、たったひとりの人が、企業文化をコントロールし、企業文化に対する責任を負っているとしたなら、その人がいなくなったら最後、その会社の文化はダメになってしまいます。そうではなくて、みんなが会社の文化づくりに加担して、みんながそれに対して責任を持つ。・・・『スケーラブル』な企業文化をつくるためには、それが唯一の方法だと思います」

先週の金曜日(10月8日)に終了した第二回ザッポス・エクスペリエンス・セミナーの中でも語られていたことですが、ザッポスでは、「小さなことでも良いから、会社の各々が一週間にひとつは新しいアイデアを出す」という決まりがあるそうです。2,000人によるアイデア創造活動の方が、CEOやごく一握りのマネジメントにアイデア創造を頼るより良いに決まっている、というのがザッポスの考え方です。

Ub|XZ~i[またもうひとつの説明で、渡り鳥の編隊飛行の例がとてもわかりやすいと思いました。渡り鳥のV字編隊に「リーダー」は存在しないということを、皆さんご存知でしょうか。それでいて、なぜきれいに編隊を組んで飛べるのかというと、隣を飛んでいる鳥と均等間隔を保って飛ぶという「本能」が備わっているからだそうです。つまり、すべての鳥が同じDNAを備えているからこそ、群れの構成員が50羽であろうと、500羽であろうと、整然と編隊を組んで飛ぶことができるんですね。

企業も同じことで、社員全員が同じDNA(コア・バリュー)を備えているからこそ、組織がどんなに成長しても企業文化を保つことができる、というのがトニーの理論です。これは、社員全員が企業文化の担い手であり、「リーダー」である、というザッポスの考え方を象徴するものでもあります。ザッポスが、「カルチャー・オフィサー」や「カルチャー・コミッティー」を設けないのはそういうわけなのですね。すべての社員が共通のコア・バリューを共有するだけではなく、ひとりひとりが、企業文化やコア・バリューを実践すること、そして、企業文化やコア・バリューの実践において周囲の人を促したり、助け合ったりすること。そういう環境をつくることが、組織の拡大に伴う企業文化の希薄化を防ぐ唯一の方法だ、とザッポスでは考えているようです。

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