「ずばり、アマゾンがザッポスを買いたがった理由は・・・?」

(2010. 9. 27)

9月23日(木)、トニーがサンタモニカに講演に来るという情報を聞きつけて、早速会場に赴きました。とあるシンクタンクが主催した公開講演でしたが、350人くらい入る会場は満席。受付の人に聞いたところ、450人くらいが事前登録をした上に、補欠リストがでるくらいの盛況であったとか。

サンタモニカで聴衆を前にスピーチをするザッポスCEOのトニー・シェイ

午後4時30分から6時までのイベントで、講演が60分間、質疑応答が30分間くらいだったと思います。サンタモニカという土地柄、また時間帯のせいか、聴衆には学術研究者が多かったのでしょうか。時々投げかけられる鋭い質問に、私も感心しながら耳を傾けていました。

講演の内容自体も、相変わらず、興味深かったのですが、今日から数回に分けて、オーディエンスから出た質問とそれへの回答を中心に、私が思ったこと、感じたことなども織り込みながらブログに書いていきたいと思います。

まず、質疑応答の時間になったとき、真っ先に発せられた質問が、「ザッポスの利益率はどれくらいか」というものでした。見たところ、ローカル誌のジャーナリストみたいな人からの質問でしたが、これに対して、トニーは、「公開企業(アマゾン)の子会社だから、財務について詳しい情報はお話できないんだけれども・・・」と断った上で、粗利益だけで答えていました。これは私も前に聞いたことがありますが、30%から35%ということでした。もっとも、私が記憶している限りは、これは靴のカテゴリーの話で、アパレルの粗利益はさらに高い、という話でしたが。

また、アマゾンがらみのことは、やはり皆興味津々なようで、複数の質問が出ました。私としては、「ずばり、アマゾンがザッポスを買ったのはなぜだと思うか」という質問への答えが一番面白かったです。これについては、トニーは、「アマゾンの思惑は想像するしかないが・・・」と一応前置きして、「アマゾンが所有している靴の販売サイト、エンドレス・ドット・コム(日本におけるジャヴァリですね)の運営が期待したほどうまくいっていないということがまず主な動機としてあったと思う」と語りました。

Ub|XZ~i[さらに、「アマゾンが極めた顧客サービスのハイテク化/自動化は、書籍や電子機器といったカテゴリーには働くが、靴やアパレルといったカテゴリーではうまく働かない。アマゾンのサービス・アプローチが、『サイエンス』であるとすれば、ザッポスのアプローチは『アート』。アプローチにおいて対極にあるからこそ、お互いから学べるところが多い」と述べています。

私も、幾度もトニーの講演を聴いたり、自分でも彼をインタビューしたりしていますが、トニーの口から、商品カテゴリーによるサービス・アプローチの違いや、アマゾンとザッポスのサービス・アプローチの違いについてここまで明確な定義がされたのは、今回が初めてではないかなと思いました。では、トニーの言動を多少深堀して考えると、ザッポスのサービス・アプローチは、電子機器のようなカテゴリーには向いていない、ということになる・・・。それが、ザッポスが電子機器の取扱いをやめた理由のひとつだろうか・・・、などと勘ぐりたくなります。

もし、トニーが言うように、アマゾン流のサービス・アプローチと、ザッポス流のサービス・アプローチにそれぞれ「適した商品カテゴリー」があるとすれば、アマゾンとザッポスの「結婚」は、ますます理にかなったことのように思えてきます。

ザッポス関連記事集へ

[PR]米国企業の企業文化・取り組みの事例にご興味のある方は、こちらへ→『未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~』『ザッポスの奇跡 改訂版』

【関連記事】