何事もまた、個々の意識の改革から:ザッポス・セミナーで気付いたこと

(2010. 3. 25)

2月に開催したザッポス・セミナー中に参加者からあがった、3つめの質問です。

「顧客の声を、いかにして業務改善に反映させているのか?」

ザッポスから参加してくれたパネラーの皆さんの回答を総合すると、次のようになるかと思います。

1. まず、顧客の声の収集
顧客の声の収集は、電話はもちろんのこと、お客様からのメールやウェブ上の会話を通して、いたるところから収集しています。

ザッポスにかかってくる電話の件数は一日約5,000件。さらに1,200件にものぼるメールと、1,000件のライブ・チャットにも対応しています。ザッポスでは、実は、電話を通して入ってくるオーダーは全売上の5%程度しかないのですが、それでも、「『ザッポスと話したい』と思って、お客様が自発的に連絡をしてきてくれる、そのチャンスを見過ごしてはいけない」と、真剣勝負でひとつひとつのコールに臨みます。

また、電話も「ソーシャル・メディア(社交媒体)」のひとつと考え、電話とウェブでの活動を同格に扱っている点も、ザッポスの特徴です。

「ソーシャル・メディア」という言葉の目新しさだけに惑わされて、やみくもにウェブの活動に走る会社が多い中、ザッポスは、「電話とウェブのどちらも重要。ウェブが特別なのではないし、ウェブがもてはやされる今日でも、電話こそが依然として最も効果的なソーシャル・メディア」という姿勢を断固として崩しません。

ザッポスではまた、ツイッターをモニタリングして、お客様の声にダイレクトに応えるという試みも始めています。アカウントは会社の名前ですが、「個」の存在を前に出すため、担当が交代制で替わるたびに名前を名乗って自分をアピールします。「こんにちは、皆さん。僕の名前はスコットです」と、そういった具合です。(これは、つい最近放送された、「ワールドビジネスサテライト」の中でも取り上げられていましたね。)

そのほか、フェイスブックをはじめ、もろもろのソーシャル・メディア・サイトやブログをモニタリングして、できるだけ多くのお客様の声を集め、またそれに対応していくというのが、ザッポスのやり方です。

2.システムを通して、社内に顧客の声を循環する

ザッポスには、「社内ウィキ」があります。このシステムを通して、部門という垣根を越え、役職や肩書きを超えて、お客様の声が社内全体に浸透します。

3.人の声に耳を傾けるオープンな姿勢が土台としてある
いろいろな仕組みの話をしていたら、最後に、こんな点が指摘されてきました。

Ub|XZ~i[これは、最も重要な点だと思います。いくら、システムがあったところで、組織に所属する人たちに、「お互いの声を聴く」姿勢がなければ、情報は蓄積されたままで行き場もなく終わってしまいます。ザッポスでの「顧客の声の収集→討議→改善」のサイクルを可能にしているのは、やはりザッポスの文化風土、個々の意識の持ち方にあるのだと私は思いました。一般の組織では、(言葉にされないまでも)システム開発部の人はシステム開発の専門家だから、素人の言うことには耳を貸さない、だとか、そんな風潮が珍しくないと思います。仮に、コンタクトセンターの人が「ウェブサイトのここが使いづらい」という声をお客様から聞いたとして、それをシステム開発部の人に知らせようとしても、相手は取り合わないかもしれません。しかし、ザッポスのコア・バリューは「オープン・コミュニケーション」であり、「家族的精神」です。すべての人がお互いを尊重し、お互いの意見やインプットに耳を傾けあう、その姿勢が、「顧客の声を業務改善に活かす」ということを、そもそも可能にしているのだと思います。「顧客の声の社内循環」なんていうと、難しい言葉のように思えますが、ファンシーなシステムよりなにより、個々の意識の持ち方が重要なのだ、ということを、改めて気づかせてくれたディスカッションでした。

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