ザッポスのトレーナーから学ぶこと:「スキル」ではない資質

(2010. 3. 23)

2月の中旬に行った講演・セミナーで上がった質問の中で、非常に面白いと思ったのに、次のようなものがありました。

「ザッポス社の『トレーナー』に求められる資質とは?」

要点は大きく分けて二つだそうで、そのうちひとつは、「ザッポス・カルチャーに対する深い理解と情熱」、そしてもうひとつは、「変化に耐え得る柔軟性」です。

やはり、どちらも、「スキル・ベース」でないところが、ザッポスらしくて興味深いなと思いました。

一般の企業であれば、『トレーナー』は、ある種の学位をもっていたり、「コーポレート・トレーニング」のライセンスをもっていたりということが求められると思うのですが、ザッポスは、こういった外の世界での「資格」にまったくといっていいほどこだわりを抱いていません。

ザッポスのトレーニング・マネジャーであるレイチェル・ブラウンの話では、ザッポスのトレーニング・プログラムの土台をつくりあげたチームは、「コーポレート・トレーニング」という分野では、「ほとんど皆素人」だったそうです。

その「素人」であった人たちが、試行錯誤を繰り返して、今では世界中の人が学びにくる、ザッポスのトレーニング・プログラムを作り上げていったのです。その根本にあるのは、「ザッポス・カルチャーに対する深い理解と情熱」に他なりません。

企業に限らず、個人を見ても、「経験がないから」とか、「やり方がわからないから」という言い訳を盾に、「何かをやり遂げない」、あるいは「できない」ことに対する理由づけをしているケースが実に多いと思います。

こういった言い訳を容認しないという点で、ザッポスはある意味、非常に厳しい会社だと思います。これは、彼らのコア・バリューの中でも、「情熱と強い意志を持て-情熱さえあれば何でも成し遂げることができる」と謳われています。

Ub|XZ~i[そのひとつの表現として、ザッポスでは、新入社員のトレーニングに、有志社員が「トレーナー」として参加することを奨励しています。「我こそは」と思う社員が、コア・バリューについて、自分なりの解釈、自分なりの表現方法で自作自演のデモンストレーションをするのです。

「ザッポスのトレーナーに求められる資質」として二番目に上がっていた「変化に耐え得る柔軟性」についても、ザッポスのコア・バリューの中の一項に通じるところがあります。

「変化を受け入れ、その原動力となれ」

私も一、二ヶ月に一度くらいの頻度でザッポスに行きますが、訪れるたびに細かいところから大きいところまでいろいろなところが変わっているので毎回驚きます。これも、ザッポスが、「これで完璧だ」という驕りや自己満足を知らない会社なのだからだろうと思います。常に、「もっとベターな方法があるはずだ」と考えていて、「いいと思ったことはとりあえずやってみる、やってみてダメだったらすぐ止める」という姿勢が徹底されているのです。一昼一夜どころか、時間単位で何らかの変更が実施されることがあるそうです。

「常に向上する文化」を掲げるのはカッコ良いことですが、実践するのは並大抵のことではありません。事前に肚(はら)を据えたディスカッションが交わされているのでしょうが、「そんなことやってもダメなんじゃないの」と物事を斜に見て、邪魔をするような人がいないというのも、「価値観の統一」や「文化の浸透」といった点でザッポスのすごさだと思います。

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