(2010年2月5日)
インタビュー取材の際、我々のために用意されたザッポスの会議室は、なんとその名も「Welcome to Fabulous Las Vegas」。英語の「Fabulous」は、「Wonderful」のもっと上を行くようなニュアンスの言葉だから、我々はこの部屋を、「超・素敵なラスベガスにようこそ!」と呼ぶことにした。
名前もすごいのだが、この会議室、一歩足を踏み入れた瞬間にもう驚いた。その名の通り、カジノをイメージした内装で、ブラックジャック用のテーブルを模したカンファレンス・テーブルやら、ルーレット台の形をした壁飾りなどがあり、シャンパン・クーラーの中に水やソーダなどのソフトドリンクが詰めてあるのもザッポスらしくて粋だ。
ザッポスにはこの他にもまだいろいろな会議室があるが、みな、社員の手作りの内装が施してある。エルビス・プレスリーの等身大のパネルや、ラスベガスのホテルの「ミラージュ」のホワイト・タイガーの見事な壁画がある部屋など、どれも見て歩くだけで楽しく、感嘆する。
会議室を社員が内装する、という慣わしは、自然発生的に始まったことらしい。ある日、あるチームが盛り上がって、あるひとつの会議室を思うままに飾り立ててしまったのが発端らしい。そうしたら、他のチームがそれを見て、「負けてられない」と次々に名乗りをあげ始めたというのだ。今でこそ、予算組みもあるというが、恐らく当初は、有志がお金を出し合い、週末返上でわいわい、がやがや言いながら造り上げたのだと思う。
さて、前述の「超・素敵なラスベガスにようこそ!」は、ファッション・バイヤー・チームの力作だという。我々が取材した2008年の9月には、まだ出来たてほやほやで、ザッポス社内でも、「この会議室は初めて」という人が多かった。そして、この会議室には、人をびっくりさせ、楽しませる、ザッポスならではの仕掛けがあった。
カンファレンス・テーブルのすぐ側の壁に掛かっているのは、ラスベガス風鳩時計で、三十分に一度、スロットマシーンで大当たりを当てた時さながらに、大量のコインがジャラジャラと落ちるような音がする。午前9時から午後6時まで、入れ替わり立ち代りにインタビューを行ったが、一件のインタビューにつき、必ず一度は、この鳩時計が鳴る瞬間があった。音が鳴り始めた瞬間、ぎょっとして周りを見回したり、慌てて携帯をチェックする人もいた。仕掛けを知っている我々は毎回思わずニヤニヤしていたが、種明かしをすると、みんなきまって爆笑になった。真剣な話をしていても、ふっとその場が和み、「Fun and a little Weird(楽しくて、ちょっと変わっている)」のザッポス・ユニバースに引き戻されたのだ。
ザッポスには、「Do not take yourself seriously(あまり深刻になり過ぎない)」という不文律がある。皆さんも経験があると思うが、参加者が自分の頭の中のアイデアに固執しすぎると、会議はステイルメイト(身動きできなくなること)になり、行き場を失う。真面目な中にも、「」を提供し、思考でがんじがらめになった頭を解き放ってくれるこの仕掛けに、なんともいえぬ「ザッポスらしさ」を感じたのだった。



