(2009年9月15日)
今日、アメリカでは、世界大恐慌以来最悪と呼ばれる不況の中で、特に中小企業の間で、ウェブを活用した低コストなマーケティングの方法が注目されてきている。今回は、私が最近耳にし、興味を引かれたワイン屋さんについてのお話だ。
ビン・エンズ・ワインは、マサチューセッツ州ボストンの郊外にあるワイン屋さんである。同社は、生産過多などの諸事情で売れ残ってしまったワインを卸業者や輸入業者から買い取り、ディスカウント価格で売るという商売をしている。「売れ残り」とはいっても、品質にはまったく問題のない「飲み頃」のワインばかりだ。同社に入荷されたワインは、まず、はじめに標準小売価格の25%引きで売り出される。そして、入荷日から3週間が経過するたびに、さらに10%の割引が加算され、最終的には小売価格の45%引きという大幅な割引が適用されるという仕組みになっている。「いつ行っても、良質な掘り出し物ワインが、他にはないお得な値段で入手できる」という地元でも誉れの高いワイン屋さんである。
このビン・エンズ・ワインが、昨年の夏から着手しているのが、ウェブを活用した「バーチャル・ワイン・テイスティング」である。
ウェブを利用して、その日試飲されるワインの醸造主、ソムリエ、そしてワイン愛好家たちが、リアルタイムで質問や感想を交換できる仕組みを組み立てたのだ。一ヶ月に二回ほど、ビン・エンズ・ワインのホームページや特設サイトを通して、「4月24日金曜日、アメリカ東海岸時間午後八時より」という具合にイベント開催日時がアナウンスされる。その時間にワインのコルクを抜き、サイトにログオンすることさえできれば、米国中、いや、世界中どこにいようと、テイスティング・イベントに参加できる。それも、そのワインを手がけた醸造主を交えてだ。
勿論、試飲されるワインは、イベント開催の三週間前にビン・エンズ・ワインのサイトを通じて売り出されるから、この試みは、ただの広報というだけではなく、ビン・エンズ・ワインにとってちゃんと実のある販売促進と、より幅広い顧客層の開拓にもつながっている。
中小企業の経営者にとって嬉しいのは、近年、こういったテクノロジーの活用が、かつての何十倍も手軽になっていることである。独自のシステムをこさえなくても、たいていのものは一般に無料で提供されているプラットフォームの上につくりあげることができる。プログラミングの知識も特に必要ない。「いまどきのテクノロジー」に目を光らせ、「いまどきの顧客」が何を望んでいるかに耳を傾けることによって、小さなお店でも地理的障壁を超えてファンの輪を広げ、「知る人ぞ知る」ブランドを築くことができるのである。ビン・エンズ・ワインのサクセス・ストーリーには、業界、業種を問わず、すべての中小企業が学べるヒントがある。
ビン・エンズ・ワイン
http://www.binendswine.com
*この記事は、日本経営合理化協会AV局、経営コラム 社長のネット情報局に掲載されたものです。



