(2008年8月12日)

ウォルマートデルが手を組んで、サービス・ビジネスに参入。そんなニュースを聞いて、「顧客主導型」の激流を改めて実感・・・。

ウォルマートとデルがアライアンスを組み、「ソリューション・センター・バイ・デル」というサービスの展開を始める、というニュースが先月の半ばごろにアメリカで報じられました。日本のメディアでもちらほら取り上げられていたので、耳にした方もいるかもしれません。類似サービスとしては、米国家電リテール首位のベスト・バイが展開している「Geek Squad(ギーク・スクアッド)」が有名ですが、店内キオスクでの対応は勿論のこと、顧客宅にテクニシャンを派遣し、PCやオーディオ機器の修理、設置などのサービスを提供してくれるというものです。

近年、ウォルマートは、家電及び電化製品カテゴリーにアグレッシブに注力してきました。得意の低価格攻勢で、カテゴリー・キラー各社の市場シェアを侵食しダメージを与えてきたのです。今後の狙いは、フラット・スクリーンTVなど高額商品の販売を強化し、同市場により深く食い込んでいくことですが、販売後の「ソリューション・サービス」の欠落が、ウォルマートの中核顧客層である「低価格志向」のお客さんから、その外へとアピールを広げていくにあたって、深刻な妨げになってきました。本格派ホームシアターに投資するようなお客さんは、よほどのオタクでもない限り、設置サービスのない店で高額品を買ったりしないからです。

今回、デルとのアライアンスによるソリューション・ビジネスの展開は、この障壁を取り除いて、家電・電化製品カテゴリーにおける「シリアスなプレイヤー」としてウォルマートの地位を確立する上での足掛かりになる、というのが、ウォルマートの目算です。かたやデルにとっては、ローカルに顔の見える「サービス・プレゼンス」を築くことで、新しいタイプの顧客層を掴むきっかけにもなるというわけでしょう。これまでは、「通販で買うと、故障が起こったとき困るわ・・・」とデルを敬遠してきたお客さんも少なくないからです。

考えてみると、昨今におけるデル・モデルの変貌は、ますます激しさを増して流通市場を襲っている顧客主導型への波を象徴するものでもあります。「モノ」をいかに安く売るか、というサプライ・チェーン・イノベーションを中核として80年代に台頭し、ぐんぐん勢力を伸ばしてきたデルは、ここにきて、顧客への提供価値の再定義を迫られているのだと思います。今のデルに、モノ売りとしての競争力はない、といっても過言ではないでしょう。PCなんてどの会社の製品を買ってもほとんど同じ、という世の中になってしまったのです。消費者の価値観は、「モノ」を安く買ってなんぼ、というところから、「買った後にどう使うのか」、ひいては、「それを使うことで、自分の暮らしがどう楽になるのか」というところに移ってきています。勝負の土俵が、顧客エクスペリエンスへと移ったということです。

「PC」という商品に特化して考えると、日常生活のIT化が急進して、ユーザー層が「マニア」から「一般人」に移ってきた、ことの影響も勿論あるでしょう。今や、家庭でもオフィスでも、PCを使うことが当たり前になりました。昔は、「PCユーザー=テクノロジーに明るい人」だったので、多少サポートが乏しくても問題なかったのでしょうが、今ではごく普通の人でもPCを使う時代です。こうした顧客層にとっては、何か問題が起こった時に、「解決策を求めて訪ねていける、あるいは、電話一本で駆けつけてくれる」距離のなさが必要不可欠だといえます。仮に親切でも、遠隔サポートでは心もとないのです。

極端に言えば、PCという商品は、「買っただけ」では役に立たないのです。買うことで、かえって頭痛が増えてしまう、というのが、PCの本質である、ともいえます。個々のユーザーのニーズに合わせて、これほどまでにカスタム化が必要な商品も他にはありません。私個人の鬱屈を吐き出してしまえば、PC流通と言う業界では、「モノ」の進歩にひきかえ、購入後のサービス・モデルの進歩がとてつもなく遅れている。「顧客主導型」の観点から言えば、こんなに時代遅れの業界はないと言ってもよいくらいです。(そして、そう考えているのは、私だけではないはずです。)

デルのような製造業者でも、ウォルマートのような小売業者でも、突き詰めていけばビジネスはすべてサービス業、という時代が到来しています。だからこそ、「モノ売り」から脱却した価値提案、唯一無二のサービス経営が求められているのではないでしょうか。



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