(02/16/2008)
近頃のビジネスの風潮で、私が常日頃から腹を立てていることのひとつに、カスタマー・サービス対応のオートメーション化がある。平たく言うと、コンタクトセンターに電話をかけると、生身の人間ではなく録音されたメッセージが流れ、選択肢に答えたり、リクエストされた情報を打ち込んだり、口に出して言ったりすることによって(自動音声応答システム)、目的の場所に誘導されていくという、あのシステムのことだ。日本ではどれだけポピュラーなのかわからないが、アメリカでは非常に当たり前になってきていて、携帯電話サービスやCATV会社、公益事業を筆頭に、このシステムを導入していない会社の方が珍しいと言ってもいいくらいだ。
腹を立てているのはどうやら私だけではないようで、gethuman.com(ゲットヒューマン・ドット・コム)というウェブサイトを立ち上げた人がいる。Gethumanというと、なんだかチャリティ団体のサイトのような響きだが、名前の意味するところは文字通り、Get Human(生身の人間と話すには)である。なんと、このサイトは、保険、通信、金融など15のカテゴリーにわたり、米国大手企業500社のコンタクト・センターに電話する際に、どうすれば録音メッセージをスキップし、生身の人間(オペレーター)と話せるか、その方法をリストしたデータベースを構築し、掲載しているのだ。TOYOTA、ゼロックス、YAHOO、コストコなど、大手の会社で思いつくところはほとんど完全といっていいほど網羅されている。すごいことを思いついた人がいるものである。
・・・と、確かにこのサイトには感心するし、私個人も大いに利用させてもらっているのだが、ふと考えてみて疑問なのは、この「顧客主導型」時代に、なぜこんなに多くの企業が反顧客主義もはなはだしい仕組みを利用しているかということである。顧客がコンタクト・センターに電話する時というのは、だいたいにおいて自分の要求が満たされずに怒っている時、憤りを感じている時である。顧客としては、一刻も早く生身の人間と話をして、自分の怒りを吐き出したい、愚痴を聞いてもらいたい、問題を解決したい、と思っているのに、機械に対応されたのでは余計腹も立つというもの。こんなに単純な理論を、大企業の経営者たちがわからないとは理解に苦しむ。
私たち生活者は、常日頃からごまんという莫大な数の広告や、その他マーケティング・メッセージにさらされている。その結果、私たちの多くは、自分に関係ないメッセージ、価値をもたらさないメッセージ、つまり、「聞きたくないこと」はシャットアウトするような体質になってしまっている。顧客が懐疑的、そして閉鎖的になっている今日の市場においては、コンタクト・センターでの対応は企業のブランド価値を顧客に体感してもらう絶好の「マーケティング好機」であるのだ。ウェブの進展に伴って発展した顧客主導型市場では、「マーケティング」という言葉の意味するところやその活動の範疇も大きく変わってきている。アマゾンの例からもわかるように、テクノロジーは、使いようによっては、顧客体験を飛躍的に向上させる威力をもつものだ。顧客体験の価値をかえって半減させるようなことには使って欲しくないものだ。



